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村上龍のカラーがよく出たセレクト。ホラーの印象薄めな作家陣だがクオリティは高い-『魔法の水』

『魔法の水 現代ホラー傑作選第2集』

村上龍(編)/1993年/250ページ



現在を呼吸する九人の作家によって切り拓かれる、魅力的で怖ろしい九つの物語。

収録作品

村上春樹「鏡」

山田詠美「桔梗」

連城三紀彦「ひと夏の肌」

椎名誠「箱の中」

原田宗典「飢えたナイフ」

吉本ばなな「らせん」

景山民夫「葬式」

森瑤子「海豚」

村上龍「ペンライト」

(裏表紙解説より)

 

 これまたそうそうたるメンツの作家陣で、なんとも編者の趣味というか人脈というか、バイアスがわかりやすいセレクトである。恐怖度だけで言えば編者・村上龍の「ペンライト」がぶっちぎりか。自分の中にキヨミという女性の霊を住まわせている、あまり教養の無さそうな風俗嬢の独白。栄養士を名乗る親切そうな男の家に行くものの、彼には凄惨な裏の顔があり…。椎名誠「箱の中」は、エレベーターの故障で閉じ込められてしまった男女2人の話。それだけならよくある話と言えなくも無いが、女性のほうがとんでもないキチガイだったとしたら? 原田宗典「飢えたナイフ」は、手に取ると愛する者を刺し殺してしまうという、呪われたナイフを外国で手に入れた男の話。きれいに決まったオチも含めて海外短編のような味わい。吉本ばなな「らせん」はホラーと言うよりは幻想的な一編で、「男女の変わらぬ愛」を非常に独特な視点で描いており、忘れがたい印象を残す。景山民夫「葬式」は、ホラー小説を書いているうちに霊に詳しくなったと自称する小説家が、友人の葬式でさまよう霊を導いてあげました…というたわけた話で、その出来の悪さで本書の中で浮いてしまっている(なぜかコレのみ書き下ろし)。

 全体的にはクオリティの高い作品が揃っており、作風もバラエティに富んでいるため人によってお気に入りの作品は異なるだろう。タイトル「魔法の水」が何を指しているのかはよくわからないが、「水」がキーになっている作品はそれなりにあり、「酒」が登場する作品も多かったりする。

★★★☆(3.5)

 

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