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家そのもの、または家族(家に棲む者)が怪異の元凶だったら…? グロ風味強めのパルプ短編集-『家に棲むもの』

『家に棲むもの』

小林泰三/2003年(再販:2024年)/251ページ

ボロボロで継ぎ接ぎで作られた古い家。姑との同居のため、一家三人はこの古い家に引っ越してきた。みんなで四人のはずなのに、もう一人いる感じがする。見知らぬお婆さんの影がよぎる。あらぬ方向から物音が聞える。食事ももう一人分、余計に必要になる。昔、この家は殺人のあった家だった。何者が…。不思議で奇妙な出来事が、普通の世界の狭間で生まれる。ホラー短編の名手、小林泰三の描く、謎と恐怖がぞーっと残る作品集。

(「BOOK」データベースより)

 

 「家」そのもの、もしくは「家族」をテーマにした作品を中心に収録した短編集。表題作「家に棲むもの」は、古い家の屋根裏に何かが棲んでいる…というよくあるタイプの怪談がベース。「怪異」からの視点が書かれているのはなかなか斬新…かと思ったが「屋根裏の散歩者」という偉大な先達がいるのでそうでもないか。とは言え怪異のおぞましさ、とぼけたラストにはわりと驚かされる。「食性」「肉」はどちらも命を食すことに対して疑問を持った男の話だが、じゃあヴィーガン思想になるのかと言えばそうではなく、悪趣味極まりないオチが待っている。「森の中の少女」「魔女の家」はどちらも童話ネタで(後者は違うかも)、中盤で想像できる結末がそのまま提示されるのでちょっと肩透かし気味だが、なんとも淫靡でアンモラルな雰囲気が心地よい。「お祖父ちゃんの絵」は、祖父のことを描いた絵の思い出を孫に話す老婆の物語。ほのぼのしたお話かと思いきや、語り手のおばあさんが相当にエキセントリックな人物であることが少しずつ明かされ、案の定といった結末が…。

 全体的にグロテスク趣味が強めで、パルプな雰囲気が漂う。途中でオチが割れる話が多く、新鮮な驚きはあまり無いのだが、こういうげろげろでおぞおぞな話が読みたくなる日というのはあります。

★★★☆(3.5)

 

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