角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

これぞ典型的モダンホラー。夫をサタニストに乗っ取られた妻の絶望的な戦い-『悪魔のワルツ』

『悪魔のワルツ』

フレッド・M・スチュワート/1993年/337ページ

世界的な名ピアニスト、ダンカン・エリー。彼の弾くリストの名曲「悪魔のワルツ」は聴く者をとらえて離さなかった。ダンカンは偶然知り合ったマイルズを自分の息子のように溺愛し、彼に莫大な遺産を残して他界した。しかしダンカンの真の目的は、何百万人に一人といわれるマイルズの「指」にあったのだ――。
狂気か錯乱か、それとも悪魔の仕業か。悪の旋律にのせて繰り広げられる、魔術的世界。

(裏表紙解説文より)

 

 これぞ典型的なモダンホラー、といった趣で懐かしい感じすらしてしまう佳作。1971年に刊行された単行本の文庫化で(よくこの作品を角川ホラー文庫創刊ラインナップに入れたものである)、原作は同名の映画にもなっている。

 大富豪のピアニスト、ダンカンの死をきっかけに、ポーラの夫マイルズはどことなく変わったそぶりを見せるようになった。ポーラはダンカンが悪魔崇拝者で、マイルズのピアニストなら羨まざるを得ない素晴らしい指を求めて、彼に憑依したのではないかと疑うのだが…。疑惑が少しずつ確信へと変わっていき、ポーラが精神的に追い詰められていく様は非常にスリリング。読んでいてだれる箇所が無い。

 あとがきでは、訳者が『ローズマリーの赤ちゃん』と本書を比較して「向こうは雑な展開もあるが、こちらは非常に綿密な構成!」などど自賛しているが、まあこのテーマであれば『ローズマリーの赤ちゃん』の亜種と言われても仕方ないかもしれない。とは言え、この後味の悪いラストの展開はやはり見事で一読の価値はある。

★★★☆(3.5)

 

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