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超パワフルで超悪趣味! 臓腑と糞便と怪蟲にまみれたB級エログロ黙示録!!-『蠅の王』

『蠅の王』

田中啓文/2008年/646ページ

ある遺跡で無数の赤子の骨とひとつの壷が発見された。その封印が解かれたとき、人類は未曾有の危機を迎えた。突如、東京では児童殺人が頻発する。そこには必ず虫が大量発生するという怪現象が…。その最中、ひとりの少女が身に覚えのない妊娠をした。頭の中では自分の子を産み、「ベルゼブブ」からこの世を救えという声が響きわたる。ベルゼブブとは?前人未到の伝奇ホラーの扉が開かれる。

(「BOOK」データベースより)

 

 人が死ぬ! 善人が死ぬ! 悪人が死ぬ! 大人が死ぬ! 子供が死ぬ! 老人が死ぬ! いたいけな幼児も乳児も死ぬ! 犬も死ぬ! 猫も死ぬ! チンパンジーも死ぬ! 死ぬ! 死ぬ! 全員死ぬ! 悪魔ベルゼブブとキリストの復活に際し、人間が虫ケラのように死んでいくというだけの話が特盛り650ページにわたって延々と繰り広げられる、超B級ナスティホラーの登場だ。

 ゴールディングの名作とは程遠い、ひたすら悪趣味で冒涜的、グロテスクな描写が続く。蜂は刺し、蛾は毒鱗粉を撒き、フンコロガシは人間を切り刻んで団子にし、蛆虫は生きたまま人を丸呑みにする。とんでもない数の犠牲者は出るが、プロローグに登場する世の中すべてを憎んで憎んで憎みまくっている考古学者を筆頭に、登場する人間の7割がとてつもなく醜悪なロクデナシである。ただ普通のホラー作品ならまず手に掛けないであろう、いたいけな子供たちも真っ先に死んでいくのである意味平等とも言える。あとがきによれば、これでも「残酷過ぎる」という理由で200枚以上削られたというのだから大したものである。ラストは神と悪魔の直接対決、大怪獣バトルと見まごうばかりの大惨事に大満足。倫理的に映像化不可能なパワフル極まりない1冊。

★★★★★(5.0)

 

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