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傍若無人なボクサーがリング上で女体化、母乳噴出して引退する悲劇。なんだこれは!?-『ボクサー』

『ボクサー』

吉村達也/2010年/323ページ

男らしさが何よりの自慢だった自分の肉体が、徐々に女になっていく!ボクシング世界王者の芹沢哲が衝撃の事実に気づいたのは、タイトル防衛戦の最中だった。その奇病のために哲はボクサーの栄光と、人間としての尊厳を奪われた。夫が女に変わるという衝撃の展開には妻も苦悩するが、医師の診断は無情にも治療不能!究極の孤独と恐怖の末に、元チャンピオンが選択した切なくも哀しい人生の結末が胸を打つ。

(「BOOK」データベースより)

 

 上記のあらすじだけでは「これホラー?」となるが、読み終えても同じ感想なので大丈夫です。主人公は傍若無人、男尊女卑、傲岸不遜の絵に描いたようなマッチョイズムの化身であり連勝中のボクシングチャンピオン。試合の前にふと自分の乳首と乳暈が肥大化していることに気づき、触ってみたところ大量の母乳を噴き出してしまう。混乱するまま試合に向かうものの、相手のパンチを胸に受けたとたんまたもや母乳が噴出、そのままテレビに放映されてしまったため試合放棄、引退という流れに。すさまじい勢いで女体化が進む元チャンプに対し、家族やセコンドたちもかける言葉が見つからず…。

 何を読まされているんだという気になるが、中身はそれほどキワモノではなく、前半はボクシング小説として普通に楽しめる。望まない姿に変貌してしまった人間が辿る悲劇的な運命…と考えれば、確かにある種のホラーでなければ書けない題材かもしれぬ。カテゴライズ不能の変な作品には間違いない。

★★★★(4.0)

 

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