『ぬばたまの黒女(くろめ)』
阿泉来堂/2021年/320ページ
神出鬼没のホラー作家にして怪異譚蒐集家・那々木悠志郎再び登場!
生まれ故郷の村が近隣の町に吸収合併されると知り、十二年ぶりに道東地方の寒村、皆方村を訪れた井邑陽介。
妊娠中で情緒不安定の妻から逃げるように里帰りした陽介は、かつての同窓生から、村の精神的シンボルだった神社一族が火事で焼失し、憧れだった少女が亡くなっていたことを告げられる。
さらに焼け跡のそばに建立された新たな神社では全身の骨が折られた死体が発見されるという、壮絶な殺人事件が起こっていた――。深夜、陽介と友人たちは、得体のしれない亡霊が村内を徘徊する光景を目撃し、そして事件は起こった――。
果たして村では何が行われているのか。異端のホラー作家那々木が挑む、罪と償いの物語。『ナキメサマ』の著者が送る、ホラーエンタメド直球のどんでん返しホラー第2弾!
(Amazon解説文より)
過去のトラウマから「父親になること」に向き合うのを避け続けている井邑陽介。彼は妊娠中の妻をひとり置いて、故郷・皆方村へと帰省し、かつての同級生たちと再会する。事務所に所属し、モデルとして活躍している鈴原芽衣子。共同で事業を立ち上げた松浦良太と篠塚通。村長の孫で、現在は東京で専業主婦をしているという九条紗季。村で林業に従事する宮本一樹。昔話に花を咲かせる中、村人たちの信仰を集めていた三門神社が火事で焼失し、神社のひとり娘・三門霧絵も死んだという話を聞かされ、陽介は驚愕する。僕たちはみんな、霧絵のことが大好きだったのだ…。
村はずれのトンネル跡で、作家を名乗る奇人・那々木悠志郎と遭遇した陽介たちは、宿を探しているという彼を連れて九条家へ向かう。那々木は三門神社の代わりに建てられた、新たな神社で起きた殺人事件について調べているらしい。その事件の被害者は、生きたまま全身の骨を砕かれるという凄惨かつ異様な手口で殺されていた。那々木は村長の九条忠宣に、かつて三門神社で行われていた「神がかりの奇跡」について尋ねるが、忠宣の口は重い。そしてその夜、悲鳴を聞いて外に飛び出した陽介たちは、闇よりも深い黒衣をまとい、巨大な木槌を手にした黒髪の女の姿を見る。その足元にはあらぬ方向に手足が折れ曲がり、あちこちから白い骨が飛び出した、“かつて人間だったもの”が転がっていた…。
前作『ナキメサマ』に引き続き、これまたオーソドックスな因習村モノ。作家・那々木悠志郎を狂言回しに展開する、正統派のオカルト民族学ホラーである。博覧強記で優れた推理力を持つ那々木だが、彼は怪異に対しての対抗手段を持っていなかったりする。身体能力はごく普通で、何かしらの霊能力があるわけでもない。頼りになるようで頼りきれない、そして油断ならないという、絶妙な味付けのキャラである。
凄惨な殺人を繰り返す、黒衣の女の正体は何者か。村をさまよう青白い亡霊たちはなぜ現れたのか。三門神社で行われていた「神がかりの奇跡」とはどのような儀式なのか。そして、語り手である陽介は、我々読者に“何を”隠しているのか…。謎が次々と提示され、中だるみする箇所がないため、一気に読み進めてしまう。怪異が物理的暴力でゴアな死体を量産していくシーンはやや既視感があるものの、いろんな意味で予想外の着地を見せるラストまで息を突かせぬ展開だ。個人的には「どんでん返し」に執心するあまり不自然さが見え隠れしていた前作よりも、因習ホラーとしてストレートな本作のほうが好みである。
★★★★(4.0)

