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見ると必ず死ぬ“呪夢”が伝染する…! ホラーの王道を秘伝技で調理した快作-『夢詣』

『夢詣』

雨宮酔/2025年/368ページ

第45回横溝正史ミステリ&ホラー大賞読者賞受賞作!

その悪夢、見れば、死ぬ――
”順番”が来るまでに、解呪の鍵を探し出せ。

「もうすぐ私が御血をいただける順番です」
“死に至る夢”を見ると訴えていた女性と老人が突然死し、
老人の胃から人外の血液が発見された。
2人の患者の死後、精神科医・紙森千里にも悪夢は「感染」り、
謎の儀式に参列する夢を見る。

一方、都市伝説〈呪夢〉を追うオカルトライターの伊東壮太 は、
死亡した同業者のメモ「鍵は夢詣」からある孤島の奇妙な祭祀の存在を知り――。

書店員からの圧倒的支持を受けた、
第45回横溝正史ミステリ& ホラー大賞〈読者賞〉受賞作。

(Amazon解説文より)

 

 精神科医・紙森千里のもとに、「見ると必ず死ぬ呪いの夢」を見たという患者が相次いで訪れる。その夢は、小さな船に乗って不気味な島へ向かい、洞窟の奥深くへと進んでいくというもの。最深部には奇妙な人物と黒い怪物がいて、どこからともなく賛美歌のような歌が響いているという。夢を見始めて10日ほど経った老人は発作を起こし、原因不明の死を遂げる。「もうすぐ“御血”を賜ることができるのだ」とうわごとを呟いていた彼の胃の中からは、人間のものではない血液が発見された。やがてその老人の死を見届けた研修医、さらには紙森自身までもが「船に乗って島に向かう夢」を見てしまう。
 一方、フリーライターの伊東壮太は、事故で死亡した先輩・青山が遺した原稿「呪夢」を読み、「見ると必ず死ぬ呪いの夢」の存在を知る。青山の妹・咲とともに呪夢について調査を進めるうち、とある島で行われていた「夢詣(ゆめもうで)」という儀式こそが呪いを解く鍵であることを突き止める。それはいったいどのような儀式なのか。やがて紙森とも合流した伊東たちは、夢に現れる“あの島”へと足を踏み入れていく…。

 

 第45回横溝正史ミステリ&ホラー大賞〈読者賞〉受賞作。平易で読みやすい文体ながら、怪奇小説としての格をしっかりと保ち続ける語り口が秀逸だ。「見ると必ず死ぬ夢」が蔓延する異常事態に直面する医師、呪いの真相を追うオカルトライター、そして彼らを導く霊媒師――登場人物の立ち位置は大変わかりやすい。そして伝染する悪夢、知られざる土着信仰「夢詣」、うごめく怪物たちの影……。ホラーの王道ともいえる要素をふんだんに盛り込みつつも、陳腐さを一切感じさせないのは作者の筆力ゆえだろう。中盤以降は、ホラー小説マニアなら心を動かされること必至の存在もその姿を垣間見せる。

 そして、ラストで明かされる呪夢と夢詣の真実。王道のテーマで描かれた本作は、結末もまた王道そのものだ。スレた読者には既視感があるかもしれないが、ここまで真正面からやり切った作品は稀少だろう。“入門編”としてもおすすめしたい1冊。

★★★★(4.0)

 

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