角川ホラー文庫全部読む

ホラー小説のレビューブログ。全部読めるといいですね

本当に醜いのは誰なのか? ‟異形”の傑作「妖怪百人会」収録!-『ゾク こわい本9 森の闇/猫目小僧2』

『ゾク こわい本9 森の闇/猫目小僧2』

楳図かずお/2026年/352ページ

 

楳図かずお自身が監修したシリーズ、「猫目小僧」第2弾!

汚れた心を持つ人間たちを、心に合った醜い姿に作り替える。醜い姿で嫌われてきた妖怪たちの企みを防ぐべく奔走する猫目小僧が、さまざまな攻撃に苦戦しながらも、リーダーである小男の秘密に迫っていく「妖怪百人会」。死ですら引き裂くことが
できない母と息子の心のつながりと、無垢な愛が引き起こす恐怖をそれぞれ違う形で描く「階段」と「手」。猫たちとともに闇夜を疾走するダークヒーロー・猫目小僧の活躍が痛快な3篇。

(Amazon解説文より)

 

 「妖怪百人会」-怪奇漫画家の雨寺太郎は、自分が漫画に描いたのとそっくりな妖怪たちに襲われる。彼らは心の醜い人間の外見を、心と同じように醜く変えてしまう「妖怪百人会」だった。百人会のリーダー‟小人”は、猫目小僧に自分たちの仲間になるよう勧誘するが、彼らが本当は妖怪ではなく、奇形に生まれたため疎まれた人間たちであると聞いた猫目小僧は「妖怪の名を騙るただの人間じゃないか、なまいきな」と誘いを断る。怒る百人会は醜い心の人間たちを襲うかたわら、猫目小僧とも壮絶な闘いを繰り広げるが…。

 妖怪ではなく奇形の人間たちが敵、というなかなかショッキングな展開。百人会のメンバーは影に乗り移って相手を操る‟影ぼうず”、水分を吸収してどんどん巨体に膨らむ‟水飲み入道”、8本の手足を持ち口から糸を吐く‟紅グモばばあ”と、いくらなんでも人間離れし過ぎている連中が多いのだが、この違和感にはちゃんと答えが用意されている。「醜い姿に醜い心が宿る」というテーマは楳図漫画には非常に多いが、ある意味で真実を突いているとは思うものの、個人的には100%受け入れがたい主張ではある。それはそれとして、徹底的に醜く描かれた「妖怪」たちのデザインは本当に素晴らしい。ちなみに妖怪百人会の会長は、バージョンによっては小人ではなく‟孤童門(こども)”という名前だったようだ。

 「階段」-幼くして母親を亡くしたちひろ少年。猫目小僧は母を恋しがるちひろを、とある空き家へと連れていき「ひと目だけおかあさんに会わせてやる」と告げる。空き家の階段を上がった先には、懐かしい母の姿があった。生前と変わらない元気そうな母を見たちひろは安心するが、母を慕う気持ちはかえって高まってしまう。もう一度だけ母に会いたいと猫目小僧に頼み込むちひろだったが…?

 死者に会いたいという純粋な想いが惨状を生む切ない話。解説でも指摘されているとおり、元ネタはイザナギとイザナミの話だろう。ラストのモノローグが効いている。

 「手」-部屋で勉強中のたくみ少年は、鬼が亡者たちを苛む‟地獄”の幻覚を見る。亡者たちに混じって母親が地獄に堕ちていくのを見たたくみは、右手で母親の手をしっかり握りしめる。幻覚はそのうち消えてしまったが、たくみは「この握りしめた右手を開いたら、母親は本当に地獄に堕ちてしまうのではないか?」と悩むようになる…。

 唐突さと理不尽さが、かえって現世とは異なる「理屈」の存在を感じさせる名編。猫目小僧の出番、というか関わり方も良い。収録された3作品、どれも傑作揃いである。ただ、このラインナップでなぜ「森の闇」なんだろう?

★★★★(4.0)

 

www.amazon.co.jp