角川ホラー文庫全部読む

ホラー小説のレビューブログ。全部読めるといいですね

角川ホラー文庫

幽霊屋敷の交霊会調査のはずが、オカルトSFの全開の壮大なる野望にたどり着く!-『バチカン奇跡調査官 ラプラスの悪魔』

『バチカン奇跡調査官 ラプラスの悪魔』 藤木稟/2012年/416ページ アメリカ次期大統領候補の若き議員が、教会で眩い光に打たれ謎の死をとげた。議員には死霊が憑いていたとの話もあり、事態を重く見た政府はバチカンに調査を依頼。平賀とロベルトは、旧知…

複雑怪奇な黄道十二宮アスペクト殺人。幾重ものギミックが読者を襲う!-『十二の贄 死相学探偵5』

『十二の贄 死相学探偵5』 三津田信三/2015年/384ページ 中学生の悠真は、莫大な資産を持つ大面グループの総帥・幸子に引き取られた。7人の異母兄姉と5人の叔父・叔母との同居生活は平和に営まれたが、幸子が死亡し、不可解な遺言状が見つかって状況は一…

ロンドンの闇を闊歩する殺人鬼に亡霊、怪人に秘神に宇宙人…。雰囲気抜群のヴィクトリアンホラー短編集-『首吊少女亭』

『首吊少女亭』 北原尚彦/2010年/332ページ 英国留学中に、ネス湖へのツアーを申し込んだ女子大生の私。だが、参加者は日本人の私ひとり。ガイドが運転する車でネス湖へ向かうと、道路沿いに小さなパブが建っている。看板には「The Hanging Gi…

5つの凶器が巻き起こすホラー芸術展の惨劇。犯人当てはシリーズ最難級!-『五骨の刃 死相学探偵4』

『五骨の刃 死相学探偵4』 三津田信三/2014年/336ページ 怖いもの好きの管徳代と峰岸柚璃亜は、惨劇の現場“無辺館”に忍び込む。そこは約半年前に、5種類の凶器による残忍な無差別連続殺人事件が起こった場所だった。館で2人を襲う、暗闇からの視線、意味…

事故死したはずの幼馴染みが、復讐のため姿を現す。寂寥感に満ちた英国サスペンス-『戯れる死者』

『戯れる死者』 スティーヴン・ギャラガー/1993年/520ページ 九月の終わりのある日。一人の少年が河口に佇んでいた。少年・ニックの目が見つめていたもの――それは、水辺に打ち寄せられて腐敗した水死体だった。二〇年後、ニックは幼馴染みのジョニーと再会…

パーツを剥ぎ取り理想の女体を造る外法、‟六蠱の軀”を行う猟奇犯を追え!-『六蠱の軀 死相学探偵3』

『六蠱の軀 死相学探偵3』 三津田信三/2010年/304ページ 志津香はマスコミに勤めるOL。顔立ちは普通だが「美乳」の持ち主だ。最近会社からの帰宅途中に、薄気味悪い視線を感じるようになった。振り向いても、怪しい人は誰もいない。折しも東京で猟奇殺人…

奇妙な連続溺死事件を追う刑事。禍々しき幽霊の‟叫び”が禁断の過去を呼び覚ます-『叫』

『叫(さけび)』 林巧/2007年/207ページ 東京湾岸埋め立て地で発生した死体遺棄事件を担当する刑事・吉岡は奇妙な感覚にとらわれていた。現場に残されたボタン、遺体の手首に残るロープの跡、すべてが奇妙な既視感を伴っている。おれは、何かを知っているの…

真っ暗な部屋の隅から隅へ歩くうち、招かれざる「もう1人」が現れる。死相もたらす魔の正体は?-『四隅の魔 死相学探偵2』

『四隅の魔 死相学探偵2』 三津田信三/2009年/352ページ 城北大学に編入して“月光荘”の寮生となった入埜転子は、怪談会の主催をメインとするサークル“百怪倶楽部”に入部した。怪談に興味のない転子だったが寮長の戸村が部長を兼ねており居心地は良かった。…

最強最悪のヴィランにやり込められたまま終わる最終巻。だが…?-『ラスト・メメント 兵士と死』

『ラスト・メメント 兵士と死』 鈴木麻純/2013年/287ページ お節介な写真家の卵・彩乃の誘いで、便利屋のバイトをすることになった和泉。老婦人の遺品整理を頼まれた先で、死を嫌悪する葬儀社の男・透吾と絵画蒐集のライバル・貴士に出くわす。故人の娘と…

死の影を視る探偵が、豪邸で起きた連続怪死事件に挑む。シリーズの1作目として完璧!-『十三の呪 死相学探偵1』

『十三の呪 死相学探偵1』 三津田信三/2008年/346ページ 幼少の頃から、人間に取り憑いた不吉な死の影が視える弦矢俊一郎。その能力を“売り”にして東京の神保町に構えた探偵事務所に、最初の依頼人がやってきた。アイドル顔負けの容姿をもつ紗綾香。IT系…

全然面白くない-『@ベイビーメール』

『@ベイビーメール』 山田悠介/2005年/254ページ 抉られた腹部にへその緒だけを残した女性の死体が発見された。彼女たちは、送信者不明のメールを受け取った一ヶ月後に殺されていた。そのメールは雅斗の恋人、朱美にも届き……戦慄の都市型ホラー小説! (Amaz…

呪禁師一族の宿命を友情・絆・恋のパワーで乗り越える熱血(?)ジュブナイル-『山内くんの呪禁の夏。夏の夕べに約束を』

『山内くんの呪禁の夏。夏の夕べに約束を』 二宮酒匂/2016年/240ページ 呪禁師の少女・紺によって、この世ならぬものが見える目にされてしまった山内くん。彼に呪いをかけた少年・青丹との対立や、自身の血の秘密といった出来事を経て、暑く長い夏が終わろ…

不幸体質の少年が過ごす、オカルトで甘酸っぱい夏休み。王道展開と癖のあるキャラが魅力-『山内くんの呪禁の夏。』

『山内くんの呪禁の夏。』 二宮酒匂/2016年/232ページ 小学六年生の山内くんは生まれもっての災難体質。昔そんな彼にお守りをくれたのは、口から火を吹く不思議な子・紺だった。「おまえに見せてやるよ。あっち側の世界を。隠り世を」紺と再会した山内くん…

乱歩が考える「恐怖」とは? レジェンド作家をより深く知るためのエッセイ・評論集-『火星の運河』

『火星の運河』 江戸川乱歩(著)、東雅夫(編)/2005年/312ページ 江戸川乱歩があこがれていた異世界、禁断の夢をえがいた表題作「火星の運河」。そして、ホラー、怪談、怪奇幻想文学関連の“乱歩随筆”の名品多数をふんだんに収載。乱歩の文章が本書のような形…

廃墟に潜む殺人鬼が映画クルーが血祭りに! ホラー映画愛が詰まりまくったパルプなミステリ-『スラッシャー 廃園の殺人』

『スラッシャー 廃園の殺人』 三津田信三/2024年/352ページ 正体不明の殺人鬼から逃げきれるのか。ノンストップ・ホラー・ミステリ! 異形のホラー作家・一藍が10億という巨額の費用をかけ、造りあげた廃墟庭園。そこでは行方不明者が続出し、遺体で発見さ…

グロテスクな精神と感情が肉体を蝕む、哀しき異形に暗い感動を覚える1冊-『こわい本8 異形2』

『こわい本8 異形2』 楳図かずお/2021年/352ページ この肉体の変異は、もう誰にも止められない。 千年後には地球が海に覆われ、人類は魚の姿になり生き延びる――予言を裏付けるかのように、エラや鱗、水かきを持った姿に 変貌していく青年の姿に戦慄す る「…

性と死の匂いが香り立つ‟平成の「雨月物語」”。幻想的な傑作短編も-『雨晴れて月は朦朧の夜』

『雨晴れて月は朦朧の夜』 夢枕獏/1999年/269ページ 耽美で心に泌み通るような幻想怪奇小説集。言葉が紡ぐ恐怖の限界に挑む傑作ホラー短篇集。幻想怪奇小説家、夢枕獏の原点ともいえる短篇を多数収録した平成の雨月物語。 (「BOOK」データベースより) 「蛇淫」…

シリーズ傑作巻! あの手この手で心の闇を描く作者の手腕に見惚れる-『こわい本7 闇』

『こわい本7 闇』 楳図かずお/2021年/384ページ 夫婦や恋人など、それぞれの人間が持つ内面の深い闇――。心の中はいつも闇 人間の内面に存在する「闇」をテーマに収録。「闇のアルバム」全24話はブラック・ユーモアやSF、ファンタジーなどオムニバス形式の…

窮地に陥った男の肉体に起こるおぞましき奇跡。分類不可能な異形作-『化身』

『化身』 宮ノ川顕/2011年/275ページ まさかこんなことになるとは思わなかったー。日常に厭き果てた男が南の島へと旅に出た。ジャングルで彼は池に落ち、出られなくなってしまう。耐え難い空腹感と闘いながら生き延びようとあがく彼の姿はやがて、少しずつ…

ちぎれる手足! もげる首! ひときわバイオレンスな作品が集う-『こわい本6 怪物』

『こわい本6 怪物』 楳図かずお/2021年/368ページ 孤独な破壊者か、 未来を創造する救世主か? 生命をコントロールすることに取り憑かれた博士が創り出した怪物――破壊と暴力に満ちた一夜を描く「恐怖人間」。海辺の村で出会った少年と幼い怪獣が友情を育む…

プロファイリングが示すたった1つの矛盾。FBI帰りの心理分析官vs猟奇殺人犯-『心理分析官』

『心理分析官』 和田はつ子/1998年/301ページ アメリカでFBI研修を終えようとしていた警視庁専属心理分析官・加山知子に至急帰国の命令が届く。捜査が難航する連続殺人事件のためだ。捜査権を与えられた知子は、妊婦を狙う残虐な手口の殺人犯を心理分析…

怪奇アンソロジーのマスターピース作品や、あのシリーズのプロトタイプも収録-『亀裂』

『亀裂』 阿刀田高、高橋克彦、荒俣宏、景山民夫、鈴木光司、綾辻行人、山崎洋子/1993年/268ページ 日常生活の裂け目に潜む極限の恐怖。現代ホラー小説の一つの到達点を示す七人の作家による七つの物語。 (「BOOK」データベースより) 「野生時代」に掲載された…

尊厳と人体奪う解体惨殺魔「バストマニア」vs新人警察官の対決!-『COVER 東京駅おもてうら交番・堀北恵平』

『COVER 東京駅おもてうら交番・堀北恵平』 内藤了/2019年/352ページ 東京駅近くのホテルで死体が見つかった。鑑識研修中の新人女性警察官・堀北恵平は、事件の報せを受け現場へ駆けつける。血の海と化した部屋の中には、体の一部を切り取られた女性の遺体…

正統派から実験作まで、ベテランから新星まで…。鈍く妖しく輝く現代ホラーのショーケース-『堕ちる 最恐の書き下ろしアンソロジー』

『堕ちる 最恐の書き下ろしアンソロジー』 宮部みゆき、新名智、芦花公園、内藤了、三津田信三、小池真理子/2024年/384ページ あらゆるホラージャンルにおける最高級の恐怖を詰め込んだ、豪華アンソロジーがついに誕生。宮部みゆき×切ない現代ゴーストスト…

30周年のフィナーレ開幕。最恐執筆陣の名に恥じない読み応え!-『潰える 最恐の書き下ろしアンソロジー』

『潰える 最恐の書き下ろしアンソロジー』 澤村伊智、阿泉来堂、鈴木光司、原浩、一穂ミチ、小野不由美/2024年/398ページ 希望も潰える恐怖がここに。全編書き下ろしの超豪華アンソロジー! 角川ホラー文庫30周年 記念刊行! ――「考えうる、最大級の恐怖を」…

あの有名ゲームを原作者自ら小説化! なぜこんなことになってしまったのか-『弟切草』

『弟切草』 長坂秀佳/1999年/340ページ 弟切草…その花言葉は『復讐』。ゲームデザイナーの公平は、恋人奈美とのドライブで山中、事故に遭う。二人がやっとたどり着いたのは、弟切草が咲き乱れる洋館だった。「まるで俺が創ったゲームそのものだ!」愕然と…

“呪われし子”が巻き起こす惨劇。貞子自身の活躍は地味だがJホラーとしては上々-『貞子 3D 2 ――再誕』

『貞子 3D ――再誕』 後藤リウ(著)、鈴木光司(原作)、保阪大輔・杉原憲明(脚本)/2013年/220ページ 安藤孝則と茜の間に、ひとりの娘が生まれた。それから5年…妻を失って別人のようになった孝則を気遣いながら、大学院生の安藤楓子は幼い姪・凪の面倒をみて…

小説版は貞子が飛び出さないぶん、せめて物語としての深みが欲しかった-『貞子 3D ――復活』

『貞子 3D ――復活』 藤ダリオ(著)、鈴木光司(原作)、藤岡美暢・英勉(原案)/2012年/229ページ 茜が教える女子高では、見ると死ぬという「呪いの動画」の噂が広がっていた。遺体に手の形の痣が残された不審死が続くなか、ついに茜の生徒も不可解な死を遂げる…

遺品の中に紛れる白骨が、絶縁した姉の秘密を物語る。都会の孤独を問うサスペンス-『ルーム』

『ルーム』 新津きよみ/2005年/262ページ 家族と絶縁状態だった姉が急死した。都会でたった一人で生きてきた姉。その部屋の後始末のため、マンションを訪れた友美は、驚くべきものを発見してしまう。それは段ボール箱に入れられた幼児の白骨だった!「いっ…

すべての厨二病は道を開けろ! クトゥルフ×バイオホラー×サイバーパンク×SFアクションのデカ盛り無敵エンタメ-『二重螺旋の悪魔』

『二重螺旋の悪魔(上)』 梅原克文/1998年/512ページ 遺伝子操作監視委員会に所属する深尾直樹は、ライフテック社で発生した事故調査のため、現地に急行した。直樹はそこで、かつての恋人・梶知美が実験区画P3に閉じ込められていることを知る。だが、すで…