『スラッシャー 廃園の殺人』
三津田信三/2024年/352ページ
正体不明の殺人鬼から逃げきれるのか。ノンストップ・ホラー・ミステリ!
異形のホラー作家・一藍が10億という巨額の費用をかけ、造りあげた廃墟庭園。そこでは行方不明者が続出し、遺体で発見される者も出た後、ついに作家自身まで謎の失踪を遂げた。そんな血腥い曰く付きの場所、“魔庭”をロケハンするために訪れた映画関係者たち。彼らに、想像を絶する恐怖と怪異が襲いかかる――! あらゆる場所に仕掛けとたくらみが張り巡らされた驚くべき庭園。そして、一行に執拗につきまとい、殺戮を平然と行なう黒怪人の正体とは? 絶叫必至、疾走感にあふれる驚愕のホラー・ミステリ。オマージュにした映画を紹介する、著者書き下ろしの「好事家のためのノート」も収録。
(Amazon解説文より)
怪奇スポットを舞台にホラー映画を撮影し、さらにメイキングも撮って心霊ドキュメンタリーも作っちゃおう! という企画のロケハンのため、撮影スタッフとキャストが廃墟庭園を訪れる。ホラー作家・廻数回一藍が作り上げたその廃園は、作家の歪んだイマジネーションが存分に発揮されたパノラマ島さながらの地。面白半分でここを訪れ、行方不明になった者も少なくない。そして一藍自身も現在は姿をくらましているのだという…。
異形の庭園を進む撮影クルーたちを追う、黒ずくめの怪人物。その姿は一藍の小説「スラッシャー 廃園の殺人」から抜け出てきたかのようだった。ひとりまたひとりと黒怪人に捕らえられ、凄惨な拷問を受け殺害されていくクルーたち。神出鬼没の黒怪人の正体は? そしてその恐るべき目的とは…!?
スラッシャー映画への偏愛ぶりが存分に発揮された1作。圧倒的なテンポの良さに加え、映画的なビジュアルの数々に豊富な小ネタ、怪しすぎるor死にそうすぎるキャラクターたち、ただただ凄惨な殺害シーンなど、その手のモノが好きな人にはたまらないB級&パルプ感にあふれている。真相はややトリッキーではあるが、勘のいい人ならところどころの違和感ある文章から推察できるであろうものだが、この絶妙な強引さも含めて楽しめるだろう。作中の「廃園」の描写はなんとも大がかり、かつロマンにあふれたもので、本作の実写化は予算的に不可能ではないかと思えるほど。
★★★★(4.0)