『ルーム』
新津きよみ/2005年/262ページ
家族と絶縁状態だった姉が急死した。都会でたった一人で生きてきた姉。その部屋の後始末のため、マンションを訪れた友美は、驚くべきものを発見してしまう。それは段ボール箱に入れられた幼児の白骨だった!「いったいなぜ、こんなものが?」戸惑い混乱する友美だが、姉の過去を探るうちに、その隠された“秘密”を知ることに…。女の一人暮らしに潜む闇を描く、戦慄のサスペンス。
(「BOOK」データベースより)
友美の姉、理美がくも膜下出血で急死した。東大を出て一流商社に勤めていた理美は、友美の見合いの席に乱入して場をブチ壊すという狼藉を働いたのち、家族と絶縁して一人暮らしをしていたのだ。友美はその後、見合い相手とは別の男性と結婚し子をもうけたが、姉がどこで何をしているかはほとんど知らずにいた。
遺品整理のために姉の部屋を訪れた友美は、かつての姉の趣味とはかけ離れた少女チックな部屋に違和感を覚える。部屋から見つかったのは、同年代の女性とのクリスマスパーティ写真。さらには飼い猫の姿まで。姉は猫嫌いだったはずなのに…。そして猫が咥えていた白い欠片は、どう見ても人間の骨だった。この骨は誰のものなのか。姉は何か秘密を抱えていたのだろうか…? 居座っていた猫を追い出した後、日を改めて部屋を訪れた友美だが、室内は何者かによって荒らされており、あの骨は誰かに盗まれてしまっていた。
姉の過去に何があったのか。友美は姉の部屋に電話をかけてきた女性、奈央子とコンタクトを取る。実家や仕事との関わり方に疑問を覚えていた奈央子は、かつて独身女性が集まるクリスマスパーティで出会った理美の生き方に感銘を受け、相談を持ち掛けようとしていたらしい。奈央子の話から、生前の理美が妹のことを気にかけていたと聞かされた友美は、“姉の本当の姿を知りたい”と思うようになる。理美のすべてを知り、距離を縮めることができたら、今度こそ本当の姉妹になれるのではないか。数少ない手がかりから、独自の調査を進める友美。だが次第に明らかになってきたのは、独りで生き続けてきた理美が誰にも見せたことのない、仄暗い一面ばかりだった…。
本作でピックアップされているのは「恐怖」というより、生きる上で誰もが抱えている様々な「不安」である。将来への不安。健康への不安。そして家族や友人や同僚に知られてはならない、秘密を持っているがゆえの不安…。身元不明の白骨が見つかるというショッキングな始まり方ではあるが、主人公の姉が持つ“秘密”は、実はそうおどろおどろしいものではなかったりする。ガチホラーを求めている向きには少々物足りないかもしれないが、等身大の女性を描くことに長けた著者ならではのリアリティに満ちた心情描写は素晴らしい。友美、奈央子、そして理美、それぞれの視点に寄せて読むことで味わいが変わるのも面白い。
★★★☆(3.5)