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小さな不満とすれ違いがルームシェア生活を崩壊に導く。終盤のホラー展開はやや唐突?-『同居人』

『同居人』

新津きよみ/2003年/253ページ

35歳、デザイナーの麻由美は都内に新築マンションを3800万円で購入する。ローンの繰り上げ返済のためにルームメイトを募り、添乗員・乃理子との同居生活がスタートした。しかし、お互いに「秘密」を抱えているために、ぎくしゃくしはじめる2人の関係。ある日乃理子が部屋に呼び入れた女性が、2人の生活を崩壊へと向かわせた―。嫉妬、虚栄心、独占欲…。女性心理の名手が紡ぎ出す、渾身のホラー・サスペンス。

(「BOOK」データベースより)

 

 不倫相手の妻が自殺したことが原因で、幻覚を見るようになってしまった乃理子。一方、新築マンションを購入したデザイナーの真由美は「お互い対等な立場でいたい」という思いから、自分が所有者であることを隠してルームメイトを募集する。住んでいた賃貸マンションを引き払い、逃げるように引越し先を探していた乃理子は真由美の元で同居を始めることになった。
 お互いに深い干渉は行わずとも、それなりにうまくいっていた同居生活だが、小さな不満、見栄、嫉妬、不運が重なり、2人の関係は少しずつぎくしゃくしていく。乃理子はマンションが真由美の所有物であったことを知ってショックを受け、真由美は乃理子がホームレスの女性を部屋に上げたことに憤る。さらに乃理子の不在中、ホームレスの女性が「乃理子のせいで骨折したから治療費を払え」と押しかけてきたため、真由美の不満はついに爆発してしまう。

 あらすじからはあまりホラー要素を感じられない本作だが、終盤になってスーパーナチュラルな展開が発生。タイトルの『同居人』がここに来て別の意味を持ってきたりする。ただ伏線らしきものはあるもののわりと唐突であり、それまで2人の行き違いからくるトラブルをニヤニヤ楽しみながら読んでいた身からすると呆気に取られてしまうほどの急展開である。エピローグもいまいち締まらない。最終章に行きつくまでの展開は最高なのだが。

★★★(3.0)

 

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