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全然面白くない-『@ベイビーメール』

『@ベイビーメール』

山田悠介/2005年/254ページ

抉られた腹部にへその緒だけを残した女性の死体が発見された。彼女たちは、送信者不明のメールを受け取った一ヶ月後に殺されていた。そのメールは雅斗の恋人、朱美にも届き……戦慄の都市型ホラー小説!

(Amazon解説文より)

 

 腹部を抉られた女性の死体が立て続けに発見される。どの被害者も妊娠していたが胎児は見つからず、周囲にへその緒が落ちているという共通点があった…。高校教師の斎藤雅斗は、友人である刑事・斎藤慎也(同じ苗字)の妹・朱美が「ベイビーメール」という奇妙なメールを受け取っていることを知る。そこには「私は子供が欲しかったが流産した。子供を欲しがるすべての人間が憎い。そんなに子供が欲しいなら私の子供を育てさせてあげる」と書かれていた。

 雅斗が慎也にベイビーメールの話をしたのち、慎也の恋人・順子が腹部を抉られた死体になって発見される。順子もベイビーメールを受け取っていたことを知ったふたりは、このメールを受け取った人間がただちに妊娠し、1か月後に急成長した胎児が腹を突き破って生まれてくるのだと推察する。 雅斗と慎也は朱美を救うため、ベイビーメールの差出人を捜しはじめた…。

 ちんたらした調査の結果、ベイビーメールの送り主は平本愛という女性であることを突き止めたふたり。メールには「私はS・O・Tという3人の男に弄ばれた」とも書かれており、坂本・大津・高本という3人の男性が同時期に狂死したという事件も起きていた。これは平本の呪いなのか? だが高本の弟に話を聞いたところ、兄は「避妊具の使用を執拗に拒む女」につきまとわれていたのだという。それだと「弄ばれた」という前提がまた違ってくるのでは? 結局、SOTの3人がなぜ呪われなければならなかったのか最後までよくわからないのであった。最終的に平本愛は死んでおり、実家を訪れたふたりに母親がスコップを振りかざして襲ってくるという急展開に。実家の庭に埋められていた平本愛の死体は携帯を握りしめていた。赤ん坊の泣き声を発する携帯を叩き壊す雅人…。

 平本がなぜベイビーメールという超現象を起こすことができたのかは、これまたよくわからないままであった。ラストは雅斗の前にベイビーメールで生まれてきたと思しき3人の子供が現れ「どうして兄弟を殺したんだよ」と問い詰めるシーンで終わる。

 

 女性の身体を奪って産まれ出る異形、死までのタイムリミットといった要素は『リング』『らせん』を彷彿とさせるが、この2作のような緊迫感や謎解きの興奮は本作には皆無である。他作品との比較は抜きにしても、文章力と物語の構成のお粗末さは話にならない。主役コンビの苗字が同じ「斎藤」というまったく意味のない設定だの、神奈川県横浜市中区とか佐賀県太良町大浦乙とか妙に細かい地名表記だの、この作者は無駄な情報を付け加えることがリアリティだとでも思っているのだろうか。だったら東京から佐賀に向かうのに飛行機を使わず新幹線に乗ったり、刑事が捜査の内容をまったく関係ない他人にベラベラ喋ったり、友人の妹と携帯のメールで交換日記を送りあったりといった無理のある展開や筋をなんとかしてほしい。行数稼ぎとしか思えない空虚な会話、まったく心情が読めないキャラ設定、推敲をしたあとがまるで見られない重複表現にも閉口する。ラスト15ページくらいになってようやくホラーらしいホラーになり、作者が書きたかったのはこの場面なんだろうなと推察できるが、ここまでの過程がいくらなんでもアレ過ぎて…。せつない展開に持っていきたかったのかもしれないが、八つ当たりで6人惨死させた女に同情できる点があるだろうか。

 とにかく情報量が少ない割にノイズが多く、物語の展開どうこう以前の問題である。濃厚な文章ならばこの雑味もいい塩梅のスパイスになっていたかもしれないが、本作は薄味のくせに雑味だらけの素人料理でしかない。アイデアはヒット作の劣化、文章は壊滅的、キャラも設定も魅力が無いとなると何を楽しめばいいのかわからなかった。

☆(0.5

 

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