角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

シリーズ傑作巻! あの手この手で心の闇を描く作者の手腕に見惚れる-『こわい本7 闇』

『こわい本7 闇』

楳図かずお/2021年/384ページ

夫婦や恋人など、それぞれの人間が持つ内面の深い闇――。心の中はいつも闇

人間の内面に存在する「闇」をテーマに収録。「闇のアルバム」全24話はブラック・ユーモアやSF、ファンタジーなどオムニバス形式のホラー・ショートショート。スリリングな夫婦関係の恐怖を描いた「凍原<ツンドラ>」、少女の切なる呪いの物語「百本目の針」、雨が降ると現れ娘をさらおうとする女は……「雨女」、男の内面の深い闇が異形へとつながる「首」、他、「本」「スクール」を収録。巻末企画に、YOUさんの書き下ろしエッセイ、稲川淳二氏と楳図かずお対談を収録。楳図かずおインタビューも収録。

(Amazon解説文より)

 

 「闇のアルバム」-1ページにつき1コマ、1話8ページというかなり変わった形式の読み切りシリーズ。大ゴマゆえの迫力に加え、ホラー、ブラックコメディ、サスペンス、SF、サイコスリラーと題材も幅広く、読みごたえがある。これはイイ。

 「凍夏(ツンドラ)」-平凡な日々を過ごしていた主婦が、家に侵入してきた暴漢に襲われる。相手の指を食いちぎってなんとか撃退するも、彼女にはある疑惑が浮かび…。一度読んだら忘れられない異常心理モノ(と言っていいのだろうか)。

 「百本めの針」-盲目の少女が友達を作るため、針を使った呪いで凶行に及ぶという悲しいお話。「雨女」-雨の日になると現れる、不気味な女の人。おかあさんがいない時に現れ、女の子を連れ去ろうとする雨女の正体は…。この2本は少女漫画誌に掲載されたもの。

 「首」-美しい妻に拒絶される毎日を送っていた男は、とうとう妻の殺害を決意。事故を装って彼女を轢き殺すのには成功したが、死体にはなぜか首が無かった。理想の女性と再婚した男だが、あの日に消えた女の首が彼を悩ませるようになり…。ラストの「首」の現れ方がショッキング極まりない佳作。「本」-妻と幸せな日々を送っていた男。妻が病魔に蝕まれていくのを見て耐えられなくなり、ある凶行に及ぶ…。「イメージポエム スクール」-「月刊ポエム」誌に掲載されたイラストポエムという、これまた変わり種の作品。ダークな学校のイメージが奔放に描かれており、楳図かずおの新たな一面を見た想い。「砂場」「二学期」というテーマでこういうイラストが出てくるとは!

 

 サイコサスペンス多め、大人向け作品が多めな1冊で、新生「こわい本」シリーズの中でも個人的にかなり好みであった。巻末企画の寄稿はYOU。対談相手は稲川淳二で、これがまた異様に面白かったりする。

★★★★(4.0)

 

www.amazon.co.jp