角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。読んだ上で、おすすめしたい作品は全力で推します。

シリーズ

ストレートな怖さでブン殴ってくるパワー型実話怪談。連作も単発も抜かりなしのクオリティ-『拝み屋怪談 怪談始末』

『拝み屋怪談 怪談始末』 郷内心瞳/2018年/288ページ ―「拝んで」始末した怪異を、怪談として「仕立てる」。戸の隙間からこちらを覗く痩せこけた女。怪しげな霊能者に傾倒した家族の末路。著者につきまとう謎の少女。毎年お盆に名前を呼ぶ声…。東北は宮城…

不倫・売春・詐欺・狂言…。業と欲望にまみれた現代版今昔物語!-『忌まわ昔』

『忌まわ昔』 岩井志麻子/2019年/224ページ 炎に飛び込み自らを焼いた兎。盗みに失敗して父を殺した子。図らずも3人を切り殺してしまった男。「今は昔」で始まり、「となむ語り伝へたるとや」で終わる「今昔物語集」。この日本最大の説話集を下敷きに、人…

2ページ完結の実話怪談短編。1つ1つの話は面白いものの、若干マンネリを感じるのも確か-『現代百物語 悪夢』

『現代百物語 悪夢』 岩井志麻子/2012年/209ページ 奇妙な赤ちゃんの夢を見る女。モデルの女性が怯える、忌まわしい村のしきたり。留置場にただ一人いた親切な男の意外な過去。叔母を憎み、互いも憎みあう偽姉妹。もう一人の自分に電話を掛ける男。取り憑…

ラブストーリーとえげつないホラーを完璧に両立した好シリーズ-『ホーンテッド・キャンパス』

『ホーンテッド・キャンパス』 著者名/2012年/288ページ 八神森司は、幽霊なんて見たくもないのに、「視えてしまう」体質の大学生。片思いの美少女こよみのために、いやいやながらオカルト研究会に入ることに。ある日、オカ研に悩める男が現れた。その悩み…

相変わらずキレのいい実話怪談集だが、同じ人物の話をコスり過ぎでは…?-『現代百物語 生霊』

『現代百物語 生霊』 岩井志麻子/2011年/224ページ 普段から恨みを買っていた不良女の交通事故。共依存する母子がお互いに抱く心の闇。いじめっ子の少年が落ちた陥穽。相性の悪いアシスタント同士の意外な関係。妻子ある男に恋した姉妹の相剋。実話になっ…

準レギュラー陣が活躍するも、主人公あってのシリーズだと再確認する結果に-『ONE 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』

『ONE 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』 内藤了/2016年/244ページ 比奈子の故郷・長野と東京都内で発見された複数の幼児の部分遺体は、神話等になぞらえて遺棄されていた。被虐待児童のカウンセリングを行う団体を探るなか深手を負った比奈子は、そのまま行方…

映画のスリリングさを再現しつつちょっと違った展開も楽しめる、理想的なノベライズ-『バイオハザード』

『バイオハザード』 牧野修(箸)、ポール・W・S・アンダーソン(脚本)/2002年/275ページ 巨大企業アンブレラ・コーポレーションが地中深くに作り上げた秘密の研究所“蜂の巣”で、開発中のウイルスが漏洩する事件が発生。鳴り響く非常警報、遮断される通路…

嘘をつかずにはいられない、業の深い人が続々登場!稀代のホラ吹き博覧会-『現代百物語 嘘実』

『現代百物語 嘘実(きょじつ)』 岩井志麻子/2010年/209ページ さらりと驚くような都市伝説を語る女。芸能界との繋がりを自慢する主婦。人を殺しかけた体験を語る男。雑誌に殺人事件をタレこむ女。凄絶な不良少女と友達だと吹聴するお嬢様。過去をなかった…

新居のお悩み解決が、日本軍と聖遺物を巻き込む壮大な風水バトルに発展!-『ワタシnoイエ』

『シム・フースイ Version1.0 ワタシnoイエ 』 荒俣宏/1993年/465ページ 新しい家にカビが異常に繁殖する。妻がノイローゼになり困り果てた小林正彦は、半信半疑で風水師・黒田龍人の事務所の扉を叩いた。風水師は土地や建物を看て吉凶を判断し、適切な処…

冒涜的死体損壊オブジェを作成する「ZERO」の正体は…次巻へ続く!-『ZERO 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』

『ZERO 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』 内藤了/2016年/249ページ 新人刑事・藤堂比奈子が里帰り中の長野で幼児の部分遺体が発見される。都内でも同様の事件が起き、関連を調べる比奈子ら「猟奇犯罪捜査班」。複数の幼児の遺体がバラバラにされ、動物の死骸…

安定の面白さだが、目玉である“黒いバス”はもはや実話怪談ではないのでは?-『怪談狩り 黒いバス』

『怪談狩り 黒いバス』 中山市郎/2021年/272ページ ある日突如現れる、黒いバスのような乗り物は、生者と死者の恨みを乗せて走る――今なお継続する怪異に震えが止まらない「黒いバス」他。本書収録作をまとめて読むことで恐怖が増す、本当に怖い怪談実話集…

村上龍のカラーがよく出たセレクト。ホラーの印象薄めな作家陣だがクオリティは高い-『魔法の水』

『魔法の水 現代ホラー傑作選第2集』 村上龍(編)/1993年/250ページ 現在を呼吸する九人の作家によって切り拓かれる、魅力的で怖ろしい九つの物語。 収録作品 村上春樹「鏡」 山田詠美「桔梗」 連城三紀彦「ひと夏の肌」 椎名誠「箱の中」 原田宗典「飢え…

業の深い人勢ぞろい! 俗っぽくも恐ろしく、どこか可笑しい99の現代怪談-『現代百物語』

『現代百物語』 岩井志麻子/2009年/224ページ 屈託のない笑顔で嘘をつく男。出会い系サイトで知り合った奇妙な女。意外な才能を見せた女刑囚。詐欺師を騙す詐欺師。元風俗嬢が恐怖する客。殺人鬼を取り押さえた刑事。観光客を陥れるツアーガイド。全身くま…

生きてても死んでても人は怖い。超自然と現実のガチンコ厭バトル、完結-『忌談 終』

『忌談 終(つい)』 福澤徹三/2015年/208ページ 疎遠だった祖父の葬式に出席した大学生の身体に生じた異変とは(「血縁」)。キャバクラに居た不思議な力を持つ女のその後(「霊感のある女」)。キャンプ場の木に吊るされていた奇妙なロープ(「縊死体のポ…

民間伝承メインゆえほのぼのさすら漂うが、後半につれ恐怖度がヒートアップ-『怪談狩り あの子はだあれ?』

『怪談狩り あの子はだあれ?』 中山市郎/2019年/272ページ 生駒山の池で家族が遭遇した怪異が、時を超えて繰り返される「拉致された?」、高層マンションの窓に張り付き、ニタッと笑っては落ちていく男が不気味な「二十二階の男」、祖父母の家で少女が出会…

殺害手段は大量の硬貨! 猟奇殺人者「リッチマン」を追え-『LEAK 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』

『LEAK 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』 内藤了/2016年/408ページ 正月の秋葉原で見つかった不可思議な死体。不自然に重たいその体内には、大量の小銭や紙幣が詰め込まれていた。連続して同様の死体が発見されるが、被害者の共通点は見つからない。藤堂比奈子…

やや古典的な怪談が目立つアンソロジー。遠野(とおの)物語のダジャレ…ってコト!?-『十の物語』

『十(とお)の物語 現代ホラー傑作選第3集』 高橋克彦(編)/1993年/281ページ 現代怪奇小説の第一人者が、独自の恐怖観を持って選び出した本当に怖い話。 収録作品 山田風太郎「人間華」 山村正夫「魔性の猫」 三橋一夫「角姫」 夢野久作「卵」 岡本綺堂「…

未練残す死者のメッセージ、意外と温かく恨み節は少なめ、かと思いきや…-『怪談狩り 黄泉からのメッセージ』

『怪談狩り 黄泉からのメッセージ』 中山市朗/2018年/256ページ あの世からのメッセージは、さまざまな形でこの世に出現し、私たちに語りかけてくる――。親族に不幸があるたびに夢枕に現れる生首、幼い子どもをひき逃げした犯人を探し求める刑事が見つけた…

たった一人の老人の「おそれ」が、町を静かに蝕んでいく。シリーズを綺麗に〆る伝奇ホラー-『おそれ』

『おそれ』 倉阪鬼一郎/2011年/423ページ 万全のセキュリティと美しい景観を備えた四季風ニュータウン。女性チェロ奏者キム・イェニョンはリサイタル中、頭部のないヘビのイメージに襲われ、この町に隠された秘密を直感する。ニュータウンを開発した企業グ…

コメカミ部分をずきずきと苛む、解釈不能の実話怪談集。ラスト1作は反則では!?-『顳顬草紙 歪み』

『顳顬草紙 歪み』 平山夢明/2015年/240ページ ある時、夜中に高野は、半睡半覚で気がつくと腕が伸びていた。腕は壁を抜けて自宅の外まで達し、なにかを掴んだ「腕の魂」。勉強に集中できなくなる度に決まって現れる、自分の姿によく似た幻影「ベンキョー…

実話怪談の新境地? 霊なのかどうかもよくわからない、奇妙で理不尽な恐怖譚-『顳顬草紙 串刺し』

『顳顬草紙 串刺し』 平山夢明/2014年/304ページ 濃霧の湖の中、兄妹が乗るボートに近づく水音と、湖面から這い上がろうとする手「霧嫌い」。事故で視力を失った鍼灸師が見た、人形の影。その後部屋に立ち篭める異臭の正体とは「蛍火」。八百屋の軒先につ…

怪奇と猟奇が濃厚に匂い立つ特選短編集。外れ無しの入門編-『芋虫 江戸川乱歩ベストセレクション②』

『芋虫 江戸川乱歩ベストセレクション②』 江戸川乱歩/2008年/196ページ 時子の夫は、奇跡的に命が助かった元軍人。両手両足を失い、聞くことも話すこともできず、風呂敷包みから傷痕だらけの顔だけ出したようないでたちだ。外では献身的な妻を演じながら、…

日本を憎悪する外国人労働者を、八百万の神の力でバッタバッタとなぎ倒す。シリーズ随一の問題作-『さかさ』

『さかさ』 倉阪鬼一郎/2010年/335ページ 世にはびこる悪しきものを封印するため全国を歩いていた聖域修復師の八神宇鏡は、不穏な兆しを感じて江の島にやってきた。時を同じくして、都内各地のコインロッカーや鉄橋の下で頭部がさかさになった人形が発見さ…

自殺志願者を救うネットのカリスマの正体は? 安定のシリーズ第3作-『AID 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』

『AID 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』 内藤了/2015年/383ページ 都内の霊園で、腐乱自殺死体が爆発するという事件が起こる。ネットにアップされていた死体の動画には、なぜか「周期ゼミ」というタイトルが付けられていた。それを皮切りに続々と発生する異常…

平均点の高い実話怪談集だが、コンセプト的に恐怖度は薄れがちか-『全国怪談 オトリヨセ 恐怖大物産展』

『全国怪談 オトリヨセ 恐怖大物産展』 黒木あるじ/2015年/240ページ 怪談とは、その土地が持つ記憶の断片なのかもしれない―。北海道のトンネル内で友人が叫んだ言葉の意味。福井県沿岸に浮かぶ島の神社へ不埒な目的で立ち入ったカップルの末路。滋賀県の…

各都道府県のご当地怪談、47編お取り寄せ。怖さとご当地性は玉石混交ながら充実の1冊-『全国怪談 オトリヨセ』

『全国怪談 オトリヨセ』 黒木あるじ/2014年/219ページ 北は北海道から、南は沖縄まで。日本全国の都道府県から蒐集した47のご当地怪談実話を収録。岩手の民宿、宮城の港町、群馬の史跡、山梨の樹海、愛知の橋、福井の沖合、滋賀の湖、京都のトンネル、鳥…

ひだりをタブー視する町の血塗られた歴史。町がクソ過ぎるせいで大惨事に思わず喝采!-『ひだり』

『ひだり』 倉阪鬼一郎/2009年/313ページ 比陀理神社では、巫女のアルバイトをしていた短大生が怪死し、ジョギング中の男が突然死する事件が相次いだ。この神社には、「鳥居は必ず右足からまたぐべし」という掟があったのだ。比陀理中学に転校してきた言美…

そうそうたるメンバーの純文学系ホラーアンソロジー。オールタイムベスト級の傑作も-『それぞれの夜』

『それぞれの夜 現代ホラー傑作選第1集』 遠藤周作(選)/1993年/283ページ 戦後の文学を築き上げた十人が織りなす、幻想と恐怖の宇宙。珠玉の十篇を収録。 収録作品 高橋克彦「遠い記憶」 三浦哲郎「楕円形の故郷」 黒井千次「音」 河野多恵子「雪」 澁澤…

俳句ホラー、漢字ホラーとしても秀逸な文字フェチ怪談。すきまから這いよる存在に聖域修復師が立ち向かう-『すきま』

『すきま』 倉阪鬼一郎/2008年/270ページ 手狭になったマンションを引き払い、思い切って一戸建てを購入することにした間庭夫婦は、郊外に中古物件を見つけた。その家は限られた予算の範囲内では破格の好条件だった。一人娘のあかりもだんだん大きくなる。…

ライバルの悪役令嬢がいちばんイキイキしてるラブコメ伝奇譚-『帝都月光伝 Phantom of the Moon』

『帝都月光伝 Phantom of the Moon』 司月透/2013年/285ページ 魑魅魍魎の跋扈する帝都・東京。主演に抜擢された女優が次々に行方不明および死亡するという、いわくつきの舞台『宵の歌姫』の上演が決まった。この不吉な作品の裏に“堕ちた月の民”の関与を感…