角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

前作とは趣向を変えたオカルトミステリ…と思いきや、終盤の展開が予想外過ぎる-『アンデッド 憑霊教室』

『アンデッド 憑霊教室』

福澤徹三/2009年/229ページ

不知火高校のいじめグループ連続殺人事件から3カ月。優等生の美少年・勇貴は、いじめパトロールを始めるが、伊美山では不可解な自殺が続いていた。そんな中、神山美咲のクラスメイトの恵が自殺してしまう。これはアンデッド玄田道生の呪いなのか…?真相を探ろうと試みた降霊術や過去に生徒が犯した殺人、そして謎の霊能者が絡みあい、やがて美咲に想像を絶する恐怖が迫りくる!大人気アンデッドシリーズ第2弾。

(「BOOK」データベースより)

 

 神山美咲たち文芸部と、不死者(アンデッド)を名乗るシリアルキラー・玄田道生の霊が伊美山の廃病院で対決してから3か月後。伊美山では若者の首吊りが相次ぎ、美咲のクラスメイトである佐々木恵も伊美山付近の駅で電車に身を投げて自殺してしまう。美咲たちは同じくクラスメイトのお嬢様・吉川綾乃と降霊術を行い、恵の霊を呼ぶ。恵の霊が降りてきているというテーブルは、玄田道生という言葉に激しい反応を示す。封印されたはずの玄田が復活したとでも言うのだろうか? 思い悩む美咲の前に、ホラー作家・鬼屋敷大造から依頼を受けたという霊能力者・樹坂磨宮が現れる。樹坂は「恵は自殺したのではない」と美咲に告げ、姿を消す…。

 スキャンダルの相次ぐ不知火高校では風紀委員の立花勇貴、岩間哲平、沼田耕介がいじめパトロールと称して見廻りを続けていた。勇貴の優等生的かつ独善的なふるまいに嫌気がさしていた耕介は、4年前に起きた連続通り魔事件の犯人が勇貴とそっくりなことに気づく。4年前に15歳だった‟少年A”が、不知火高校に転校してきたのだろうか…? 

 

 玄田は本当に封印されたのか。前作のラストで玄田に取り憑かれたと思しき刑事はどうなったのか。勇貴の一連の行動の目的とは。突如現れた樹坂は何者なのか…。純粋なホラーだった前作とはやや趣向を変え、今回は複数の謎が同時に展開されるミステリである。黒幕の正体も意外なもので、前作がシンプルな筋立てだったせいもあり、油断していたところにガツンと一撃を喰らったかのようだ。

 本作の本領はここからで、オカルトを扱ったミステリとしていちおうの決着を見た後に予想外の展開が押し寄せてくる。前回あって今回なかったアレの復活、オカルトを越えてSFの領域へと踏み出している怒涛の伏線回収…。最後の最後まで気が抜けない、なかなかしたたかな一作である。

★★★☆(3.5)

 

◆Amazonで『アンデッド 憑霊教室』を見る(リンク)◆

www.amazon.co.jp