『祟られ屋・黒染十字 その呪い、引き受けます』
敷島シキ/2020年/288ページ
お人よしカウンセラー・白崎の元に痩せ細った女性患者がやってきた。ところが助言に激昂した彼女は呪いの言葉を残し去る。夜、ふと目を覚ました白崎が見たのは、床を蛇のように這い回る化け物。白崎は藁にもすがる思いで、あらゆる呪術を駆使し祟りを祓うと評判の祟られ屋・黒染十字を訪ねる。しかし、美形なのに変人の黒染に巻き込まれ、一緒に祟りの元凶を探ることになってしまい―。不本意コンビのホラーミステリ、開幕!
(「BOOK」データベースより)
自らが呪いに祟られることで、その呪いを祓う「祟られ屋」こと黒染十字と、彼に依頼をしたことでなぜか共に呪いの調査をすることになってしまった心理カウンセラー・白崎真人が主人公のホラーミステリ。
白崎がカウンセリングした摂食障害の女性は、「キレイさま」なる蛇のような女に取り憑かれていた。「捨てんの?」という謎の言葉を残すキレイさまの正体は「ステンノ」ことゴルゴーンに違いない! と推測した黒染は、まさかのギリシャ神話の大物の登場にテンションを上げるのだが…。
美貌の持ち主にてエキセントリック極まりない黒染(依頼者の祟りを引き受けるためには共感性が大切、という彼は普段は共感性を極限まで抑えているため、たびたび人を怒らせる)と、カウンセラーとしてのコミュ力で調査をこなす白崎との相性はよく、バディものとして素直に面白い。むろん黒染のキャラも良く、霊験あらたかなお札とかではなく、100円ショップで買ってきたような材料で祟り対策のガジェットを作り上げる辺りは彼の有能さと破天荒さをよく表している。まあ黒染が祟りを実際に引き受けるシーンはほとんど無かったりするのだが。
キャラがライト寄りな一方で、祟りそのものの悪質さはガチである。個人的に角川ホラー文庫のバディものミステリはやや食傷気味ではあるのだが(ラストで明らかになる黒染の正体も、とある人気シリーズと被り気味である)、それを差し引いても楽しく読めた1冊である。
★★★☆(3.5)