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人の心を縛る呪いは怨霊よりも恐ろしい。「再読率100%」は伊達じゃない-『予言の島』

『予言の島』

澤村伊智/2021年/352ページ

初読はミステリ、二度目はホラー。この島の謎に、あなたもきっと囚われる。

瀬戸内海の霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・宇津木幽子が最後の予言を残した場所。
二十年後《霊魂六つが冥府へ堕つる》という――。

天宮淳は、幼馴染たちと興味本位で島を訪れるが、旅館は「ヒキタの怨霊が下りてくる」という意味不明な理由でキャンセルされていた。
そして翌朝、滞在客の一人が遺体で見つかる。しかしこれは、悲劇の序章に過ぎなかった……。

すべての謎が解けた時、あなたは必ず絶叫する。
再読率100%の傑作ホラーミステリ!

(Amazon解説文より)

 

 幼なじみの宗介が、自殺未遂の末にブラック企業を退社。彼を元気づけるため、幼なじみの淳と春夫は宗介を連れて霧久井(むくい)島へと旅行へ向かう。だがその島には、かつての霊能者・宇津木幽子が恐るべき予言を残していた…。淳たちが泊まるペンションにはオーナー夫婦のほか、観光客のぽっちゃり女性、20代の青年と彼を溺愛する母親の親子連れ、そして宇津木幽子に心酔する自称占い師・虚(うつろ)霊子と、「いかにも」な連中が宿泊している。そして当然のごとく、島では宇津木幽子の予言に沿った形で次々と死者が出るわけである。わかりやすいほどに金田一チックなミステリだ。で、後半になって事件の全貌が明らかになったかと思いきや、まだまだページが残っており、さらにもう一段階のドンデン返しが…というパターン。作品の宣伝の仕方を見ればだいたい察せられると思うが、「ははーん、アレだな」と見当を付けながら読み進めていてもまず見抜けないと思う。安心して読んでいただきたい。

 90年代のオカルトブームを支えたキーワード、冝保愛子だのノストラダムスの大予言だのが散りばめられており、アラフォーにとっては懐かしい。オカルトは娯楽であると同時に、人を縛る「呪い」になり得ていないか。作中に登場するとある人物は、宇津木幽子を、オカルトを、金田一的な土着的ミステリを、徹底的に否定する。人はどうオカルトに、ホラーに対すべきか。己の来し方を振り返るきっかけになり得る1冊かもしれない。

★★★★(4.0)

 

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