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舞台は山奥の因習村。儀式の‟御役目”に選ばれたヒロインとの逃避行!-『ホーンテッド・キャンパス この子のななつのお祝いに』

『ホーンテッド・キャンパス この子のななつのお祝いに』

櫛木理宇/2015年/352ページ

オカルト研究会の頼れるアネゴ、藍の卒業を祝し、オカ研の面々は温泉旅行に出かけることに。しかし猛吹雪のせいで行き先を変更し、吊り橋の先にある秘境の宿を目指す。お宿の雰囲気は最高だが、霊が視える森司は、宿の周りで粗末な着物姿の子供の幽霊を目撃する。なるべく気にせず、片想いのこよみとの旅行を楽しんでいた森司だが、吊り橋が落ち、皆で宿に閉じ込められ…。シリーズ初の長編、青春オカルトミステリ第8弾!

(「BOOK」データベースより)

 

 温泉に向かう途中で猛吹雪に遭ったオカ研の面々は、予定を変えて秘境の宿に泊まることに。瓜子姫伝説の残るこの村では、数え年で七の倍数の子供が”御役目”を果たす祭りの儀式が今も続いているという。
 宿を満喫するオカ研メンバーだったが、村に通じる吊り橋が落ちる、雷の影響で停電が相次ぐといったトラブルのおかげで村を出られずにいた。そんな中、真司が出会った村の少女・香枝は「わたしは、わたしを殺した犯人を捜しているの」と告げる。かつて、御役目の最中に殺された少女とは彼女のことだったのだ。
 祭りが近づく村では、御役目役の少女と社の御神体が消えるという事件も発生。明らかに、ここでは何かが起きつつあった。小さな村の歪んだ人間関係、かつての伝承の真実が露わになっていく…。

 

 いわゆる「因習村」を舞台にした、劇場版というよりは2時間スペシャルのような趣の長編エピソード。ほんとうはグロい昔話・瓜子姫伝説を元に村の因習が語られると同時に、瓜子姫伝説以上にグロテスクな人間関係も綿密に描かれていく。ドロドロした陰鬱な話になりそうだが、オカ研のメンバーがわりと温泉旅をエンジョイしているのが救いである。黒沼部長の異父弟で天然のトラブルメーカー・菱山久裕も登場、彼の一言で「七の倍数の年の御役目役」としてこよみが狙われることになり、森司はこよみを連れて村を脱出しようとするのだが…というのが今回のクライマックス。旅の解放感でいろいろ大胆になってる感のあるあれやこれやも含めて、サービス精神に溢れたスペシャル巻と言えましょう。

★★★★(4.0)

 

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