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「シリーズ最恐」は伊達じゃない圧倒的怪異も登場。相変わらずの安定した読み応え-『ホーンテッド・キャンパス 雨のち雪月夜』

『ホーンテッド・キャンパス 雨のち雪月夜』

櫛木理宇/2014年/352ページ

草食男子大学生、森司に訪れた試練。それは簿記の試験と、美少女こよみへの片想いを妨害する昔なじみ(男)。彼に翻弄されつつも、こよみへのクリスマスプレゼントを買うため、森司はバイトをすることに。けれど引っ越しのバイトで訪れたのは、飛び降り自殺を繰り返す霊が棲むマンションで…。シリーズ再恐エピソードほか、アネゴ肌の人気キャラ・藍の過去も収録。胸キュンさせるにも程がある、青春オカルトミステリ第6弾! 

(「BOOK」データベースより)

 

 前巻と同じく、巻を通してのゲストキャラとして森司の元同級生・津坂浩太が登場。ちょっと似たパターンが続くが、各エピソード自体は相変わらず幅広く、マンネリ感が無い。
 「旅籠に降る雨」-若女将が来てから賑わいを取り戻した老舗旅館だが、蛙や石、泥の雨が降るという怪奇現象に起きていた。ポルターガイスト現象が原因と見たオカ研は、「抑圧された子供」の存在が一連の事件を起こしていると推測するが。「白のマージナル」-オカ研の設立、ならびに副部長の藍と黒沼部長、泉水の3人の出会いを描いた過去編。身の回りから小物がなぜかなくなってしまうという、よくある現象に悩まされていた藍だが、学校でたまたま出会った泉水が藍に“憑いているモノ”を指摘したことで、霊の仕業であることが判明し…。「よくない家」-森司の引っ越しバイト奮戦記だが、同時にオカ研では対処できない圧倒的な悪意の存在が語られる回。上のあらすじには「シリーズ最恐エピソード」などと書かれているが、確かにこれまでにはなかったパターンの事件である。今後、別のエピソードで関わって来てもおかしくないくらいの存在だが再登場するのだろうか。「異形の礎」-浩太が合コンで出会ったバカ大学生の連中が遊び半分で心霊スポットへ行き、慰霊碑をブチ倒してしまったため案の定大変なことが起きてしまい…。ベタにもほどがある話だが、「タクシー怪談」に関する分析、歴史の暗部から生まれた強烈な呪いの正体など、お馴染みの題材を作者ならではの手腕で捌いている。大安定のシリーズと言えよう。

★★★★(4.0)

 

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