『NIGHT HEAD/覚醒』
飯田譲治/2000年/497ページ
強すぎる超能力を持って生まれた霧原直人・直也兄弟。ふたりは、その力ゆえ両親に恐れられ御厨恭二朗の超能力研究所に隔離されたが、“岬老人”の死により結界が破れ外の世界へと脱出する。「ふたりが外にでるとマイナスの力を引きつけてしまう」御厨の言葉どおり彼らを待ち受けていた「外」は、“楽園”ではなく人間の欲望が渦巻く“闇”世界だった。次々と彼らにふりかかる恐しい事件。やがて、ふたりは自分たちの能力にかかわる不思議な運命に翻弄されていくが…。飯田譲治の描くサイキック・ホラーの最高傑作「NIGHT HEAD」ホラー文庫で新登場。
(「BOOK」データベースより)
強力なサイコキネシスを持つ兄・直人と、鋭敏なリーディング能力を持つ弟・直也。幼いころから隔離されていた超能力研究所を脱出した2人だが、歩いているだけでマイナスの力を引き寄せてしまう彼らは様々な事件に見舞われる…。第一部は「世にも奇妙な物語」で放映された「常識酒場」のエピソードに当たるパート、直人・直也兄弟がドライブインで飯を食べるだけで大騒ぎになる事件から始まる。ドライブインで顔を合わせた男女が連続殺人事件の犯人であることを知った兄弟は、直也の予知能力で新たな犠牲者を事前に救うのだった。第二部では兄弟の過去が語られるとともに、とある高校で起きたマインドコントロールによる自殺の連鎖を止めるべく奮闘する2人の姿が描かれる。
ドラマ放映当時は社会現象レベルで大ヒットし、ポケモンの技名にもなった『NIGHT HEAD』の原作者自らの手によるノベライズ。超能力を忌まわしき力として描き、その力に翻弄される超能力者の悲哀をテーマにした作品だが、展開の巧みさに舌を巻く。序盤こそ「人の悪意をモロに受けてしまった直也が泣き叫び、キレた直人がサイコキネシスで大暴れする」というテンプレ展開が目立つものの、兄弟の苦悩ぶりはリアリティと説得力があるし、チョイ役のサブキャラクターも背景とその心理を細かく描くことで話に厚みを持たせている。ちょっとクドく感じる箇所もなくはないが、手法としては一時期のスティーヴン・キングに近いとも言える。時空を越える謎の少女・翔子や悪意を持った存在「Y」といった謎めいたキャラの出し方も巧く、先が気になる構成だ。さすがヒット作だなあと思わせるだけのパワーを感じる一冊。
★★★★(4.0)