角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

★★★

属性盛り過ぎの女怪盗・黒蜥蜴のキャラクター性が強烈!-『黒蜥蜴 江戸川乱歩ベストセレクション⑤』

『黒蜥蜴 江戸川乱歩ベストセレクション⑤』 江戸川乱歩/2009年/221ページ 社交界の花形で、腕に黒いトカゲの刺青をしたその女は、実は「黒トカゲ」と呼ばれる暗黒街の女王、恐るべき女賊であった。とある宝石商が所有する国宝級のダイヤを狙う黒トカゲは、…

意外な巨匠たちの怪奇作品。菊地秀行の趣味全開、懐かし系コミックアンソロジー-『闇の画廊』

『闇の画廊 ホラーコミック傑作選第2集』 菊地秀行(選)/1996年/325ページ 闇に蠢く狂気と絶望、そして悲惨…。八人の巨匠が描くダーク・ギャラリー!! 時空を超えて、いま甦る傑作恐怖コミック集。〈収録作品〉関谷ひさし「恐怖の幻視人間ムーズ」武内つなよし…

真のジグソウ後継者がゲームオーバーを告げる。『4』から続く因縁がここに終結-『ソウ ザ・ファイナル ―SAW3D』

『ソウ ザ・ファイナル ―SAW3D』 行川渉(著)、パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン(原案)/2010年/230ページ ジグソウのゲームを生き残ったボビー・デイゲン。“サヴァイバー”としてマスメディアに取り上げられた彼は現代のイコンとして祭り上げられ…

痛さと痛快さはシリーズ随一、伏線回収でスッキリ。クライマックス間近!-『ソウ6 ―SAW6』

『ソウ6 ―SAW6』 行川渉(著)、パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン(原案)/2009年/249ページ FBI捜査官ストラムが死体となって見つかる。ジグソウの後継者と疑われていたストラムの死で、一連の事件に終止符が打たれたかのように思えた。しかし、ス…

横溝正史のジュブナイル探偵小説を少女ホラー漫画へと見事にリメイク-『血まみれ観音 ~高階良子傑作集~』

『血まみれ観音 ~高階良子傑作集~』 高階良子/1995年/410ページ 肩に刻みこまれた人面疽の謎を追い、血飛沫が飛び散り、恐怖が襲う「血まみれ観音」(横溝正史「夜光虫」より)。絶望の淵に立たされた少女を助けに来た天才医師が踏み入れたのは、破滅への道な…

映画版とゲーム版の設定をうまくすり合わせた『Ⅱ』を忠実にノベライズ-『バイオハザードⅡ アポカリプス』

『バイオハザードⅡ アポカリプス』 キース・R・A・デカンディード(著)、富永和子(訳)/2004年/330ページ アリスは病院のベッドで目覚めた。T・ウイルスに汚染された“蜂の巣”から生還したのが三十六時間前。ラクーンシティはアンデッドたちの街と化していた…

前作で死亡しているにも関わらず、ゲームを完全に支配下に置くジグソウの影。サーガはなおも続く-『ソウ4 ―SAW4』

『ソウ4 ―SAW4』 行川渉(著)、パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン(原案)/2007年/255ページ ジグソウとアマンダは死んだ。ジグソウの遺体の中から発見されたテープが再生される。「私の仕事は続く。ゲームは始まったばかりだ」。ジグソウに関わっ…

死者の金を巻き上げて鎮魂! 幽霊相手の詐欺に奮闘するお人好し主人公-『幽霊詐欺師ミチヲ』

『幽霊詐欺師ミチヲ』 黒史郎/2011年/269ページ 借金を苦に自殺しようとしていたところ、カタリという謎の男に声をかけられた青年ミチヲ。聞けばある仕事を引き受ければ、借金を肩代わりしてくれるという。喜ぶミチヲだったが、その仕事とは、失意の果てに…

映画版よりグロ描写がマイルドになったぶん、登場人物のガバさが目立つ-『ソウ3 ―SAW3』

『ソウ3 ―SAW3』 行川渉(著)、ジェームズ・ワン、リー・ワネル(原案)/2006年/167ページ 女刑事ケリーは、小学校でおこった殺人現場に呼び出される。鎖に繋がれ、爆弾で飛び散っていた死体が行方不明となっていたエリック刑事でなかったことに、胸をなでお…

人間の独創性と創造力の賜物! 悲鳴と血しぶきに彩られた赤黒い世界史-『美しき拷問の本』

『美しき拷問の本』 桐生操/1994年/235ページ 自分の意にそわぬ者を従わせるため、権力者たちが好んで用いた“拷問”と“処刑”という恐るべき罰。世界のあちこちで、人は知恵をしぼり、想像を絶する残酷な方法を編みだしてきたのだ。断頭台の露と消えた悲劇の…

シリーズ初期作のミステリ要素はノベライズとも相性良し-『ソウ2 ―SAW2』

『ソウ2 ―SAW2』 行川渉(著)、ダーレン・リン・バウズマン、リー・ワネル(原案)/2005年/218ページ ある猟奇殺人事件の捜査にあたっていた刑事エリック。その陰惨極まる殺人現場を目にした彼の頭を、ひとつの名前がよぎる。「ジグソウ」。複数の犠牲者を出…

偉大なるデスゲーム映画の第1作目を卒なくノベライズ。原作履修済みでも退屈はしない出来-『ソウ ―SAW』

『ソウ ―SAW』 行川渉(著)、ジェームズ・ワン、リー・ワネル(原案)/2004年/183ページ 老朽化したバスルームで目覚めた二人の男。足首は頑丈な鎖で繋がれ身動きがとれない。二人の間には血みどろの自殺死体とテープレコーダー、一発の銃弾、そして二本のノ…

オンラインゲームのプレイヤー殺しと現実の殺人事件がリンク。言うほど「超巨大密室」ではなくない?-『超巨大密室殺人事件』

『超巨大密室殺人事件』 二宮敦人/2013年/350ページ 超人気オンラインゲーム「サンド・ランド」。仁菜の友人の照は、ゲームと現実の区別を失う程ゲームにのめり込み、ゲーム内で恋人が殺されたと泣き喚く。顔面を破壊する凄惨な連続殺人が世間を騒がす中、…

芥川、鴎外、太宰、漱石…「現代ホラー」と呼んでいいのか悩む文豪揃いのアンソロジー-『森の聲』

『森の聲 現代ホラー傑作選第5集』 内田康夫(編)/1995年/290ページ 数々の名作を生んだ十一人の巨匠が、混迷の時代に神火を灯す森羅万象の世界。収録作品芥川龍之介「妖婆」石川淳「灰色のマント」泉鏡花「化鳥」折口信夫「神の嫁」川端康成「片腕」小泉八雲「青柳の…

最後の最後にして百物語らしくなった(?)大盤振る舞いの最終巻-『現代百物語 終焉』

『現代百物語 終焉』 岩井志麻子/2018年/224ページ すべてのものには終わりがくる。生命が終わり、死を迎えること―終焉。異世界の住人となった者たちに向かって飲み屋のママはこう語る。「あの世の人達って強い理由だけで出てこないし、正当な理由だけで動…

小説・エッセイ・評論・コミック、古今東西の髪の毛にまつわる恐怖がぞわりと集う-『黒髪に恨みは深く』

『黒髪に恨みは深く 髪の毛ホラー傑作選』 東雅夫(編)/2006年/347ページ 髪は神に通ずる―古来、毛髪には玄妙不可思議な力が宿ると考えられてきた。豊かに波うつ女性の黒髪は、エロチックな美の象徴となり、恐るべき妄念の化身ともなって、多くの怪談やホラ…

サクサク軽く読める一方でじっとり重い、「男と女」を書き続けてきた著者ならではの自選集-『指先の戦慄』

『指先の戦慄』 新津きよみ/2010年/288ページ 萌子は、かつて夫だった男と待ち合わせをしていた。折り入って相談があるというのだ。萌子の親友と不倫関係になり、やがて彼女を捨てて親友と結婚した男は、弱りはてた様子で、一度妻と会ってくれないかと持ち…

犯人も探偵役も被害者も全員病み過ぎ、サイコ揃いのサイコミステリ-『ママに捧げる殺人』

『ママに捧げる殺人』 和田はつ子/2004年/220ページ 女子大生の愛奈は、家事をこなし、家族の面倒を見る真面目な学生と思われていた。だが、彼女自身は母親に厳しい監視を受けていた。下着からアクセサリー、スカートや化粧品まで、愛奈の身につけるものは…

嘘つきエピソード大解放! 虚飾と欺瞞にまみれた不実な人々のオンパレード-『現代百物語 不実』

『現代百物語 不実』 岩井志麻子/2017年/224ページ 「自殺した彼女の人生を代わりに生きています」――滔々と壮絶な体験を語る作家志望の女。傷害事件にまで発展した気まぐれの作り話。芸人が体験した3つの謎と符合する実際の陰惨な話。息を吐くように嘘を…

20年前の“いじめ”の恨みが爆発する復讐サスペンス…かと思いきや、予想外過ぎる真相に困惑-『卒業』

『卒業』 吉村達也/2002年/180ページ 高校卒業の日、積年の怨みを自殺という形であてつけようと、伊豆山中に死に場を求めた神保康明は、そこで奇妙な老人と少女に会う。「二十年後を待て」それが老人の放ったメッセージ。死を思いとどまった康明は、やがて…

文庫版最終巻にして、メンバーの過去にまつわる話を集めた入門篇。続きはコミックスで-『黒鷺死体宅配便 5』

『黒鷺死体宅配便 5』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2009年/174ページ 死体専門のダウジング能力を持つ沼田真古人は、幼いころ、その技術を教えてもらった師匠と再会を果たす。しかしそれは悲しい別れの始まりだった――!? “お届け物は死体です”。死んだ…

エピソードのトンデモぶりが極まった傑作巻。あまり死体を宅配してない気もするが…-『黒鷺死体宅配便 4』

『黒鷺死体宅配便 4』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2009年/218ページ あいかわらず仕事に恵まれない「黒鷺死体宅配便」のメンバーたちは、村起こしを目的としたミステリーサークル作りのアルバイトをしていた。偶然にもこの村には、40年ほど前に墜落し…

そもそも死体から依頼を受けてもたいして金にならないのでは? と今さら気づく第3巻-『黒鷺死体宅配便 3』

『黒鷺死体宅配便 3』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2008年/188ページ 「頼む、カラダを戻してくれ」……死体からしか聞こえないはずの声が、死ぬ間際のホームレスから聞こえてきた。壊死した腎臓が病院で摘出され、ホームレスは息を引き取った。声はどう…

やっぱり「生きてる人間のほうが怖い」のか。原点に立ち返った粒揃いの1冊-『現代百物語 因果』

『現代百物語 因果』 岩井志麻子/2016年/209ページ ダイヤが原因で滅びてしまった一家。夫が妻に語ったある夏の出来事。後輩に対して威圧的な振舞いを続けた男の末路。混線した電話から小さく聞こえる誰かの会話。欲望に支配された人の心の闇は深い。その…

死体を甦らせてまた殺す葬儀屋VS死体宅配便。死者蘇生能力がニッチな商売に!?-『黒鷺死体宅配便 2』

『黒鷺死体宅配便 2』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2008年/218ページ 死体の声を聞き、その依頼に応じて報酬を得る黒鷺死体宅配便。手違いから死刑囚の死体を手に入れた唐津。その死体の望みは、殺してしまった一家の、生き残った子供に会って謝ること…

死体にまつわるスペシャリスト達が、死体の最期の望みを叶えます。内容はともかくなぜホラー文庫?-『黒鷺死体宅配便 1』

『黒鷺死体宅配便 1』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2006年/253ページ 死体の声を聞くイタコ、死体を探すダウジング、死体修復のエンバーミング、情報収集のハッキング、宇宙人と交信するチャネリング。それぞれ特技をもった仏教大学の学生5人が作った…

悪ふざけギリギリのアイデアに満ちた、笑いに特化したホラー短編集-『夏合宿』

『夏合宿』 瀬川ことび/2001年/206ページ 中学二年生の俊輔は、たったひとりで剣道部の合宿へむかうところだった。夏期講習に参加したため、みんなと一緒に出発できなかったのである。合宿先は毎年恒例の、貸し別荘が点在する避暑地だったが、剣道部が借り…

幽霊なみに話が通じない、理解不能・コミュニケーション不能な人間の恐ろしさ!-『現代百物語 妄執』

『現代百物語 妄執』 岩井志麻子/2015年/224ページ 刑務所で病に伏せる罪人に高額な医療費を送りつける逆・死神。古書店で入手した一般人の日記帳に綴られた壮絶な書き込み。ファンから著者に贈られた鍵と簡素な地図。女性ライターの股間に憑いたインチキ…

“読者視点”がいちばん残酷。歪みきった愛はかえって純愛なのか-『恋愛禁止』

『恋愛禁止』 長江俊和/2023年/256ページ 瑞帆の前に現れた3人の男――。1人は、ある時期、彼女の世界の中心だった。だが、いつしか愛情は憎しみに変わり、口論の末、彼を衝動的に殺してしまう。発覚を恐れた瑞帆だったが、一向に殺人は露呈しない。そのこ…

明智小五郎入門編。一時の享楽と長年の怨讐、正反対の性質を持つ2つの怪事件-『屋根裏の散歩者 江戸川乱歩ベストセレクション③』

『屋根裏の散歩者 江戸川乱歩ベストセレクション③』 江戸川乱歩/2008年/241ページ 世の中の全てに興味を失った男・郷田三郎は、探偵・明智小五郎と知り合ったことで「犯罪」への多大な興味を持つ。彼が見つけた密かな楽しみは、下宿の屋根裏を歩き回り、他…