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オンラインゲームのプレイヤー殺しと現実の殺人事件がリンク。言うほど「超巨大密室」ではなくない?-『超巨大密室殺人事件』

『超巨大密室殺人事件』

二宮敦人/2013年/350ページ

超人気オンラインゲーム「サンド・ランド」。仁菜の友人の照は、ゲームと現実の区別を失う程ゲームにのめり込み、ゲーム内で恋人が殺されたと泣き喚く。顔面を破壊する凄惨な連続殺人が世間を騒がす中、照を心配してゲームに参加した仁菜はやがて、この連続殺人とゲーム内で頻発するプレイヤー殺しの共通点に気づく。2つの殺人事件が交錯し、浮かび上がる驚愕の真相とは!?ゲームと現実が混ざり合う、戦慄のサスペンス・ホラー!!

(「BOOK」データベースより)

 

 上の解説を見ればわかる通り、オンラインゲームでの殺人(プレイヤー殺し)と現実世界での殺人がリンクするミステリである。タイトルの「超巨大密室」はオンラインゲームのワールドのことを指しているのだが、フカシというか釣りというか、あまり巧くはない。隔離された空間とは言え、外部からダイレクトに干渉を受けるゲーム世界は密室とは言いがたい。タイトルだけ見て、本当に物理的に巨大な密室での殺人事件を期待してしまう読者もいるのではないか。

 いわゆるMMORPGと呼ばれるオンラインゲーム自体は2013年当時ですでに目新しくもなく、描写自体は今読んでも特に古さは感じない。主人公格の登場人物が大金持ちで引きこもりでネトゲ廃人のブサイク、大金持ちで引きこもりでネトゲ廃人のイケメン、特にゲームに詳しくない普通の女性といったテンプレの顔ぶれなのはどうかと思うし、終盤のムリのある展開(殺人鬼に殺されそうになっている瞬間ですら、チャットツールでタイピングしないと話し合えない)、あまりに「ゲーマー」な真犯人の動機は気になるものの、ゲームでしか成立しない駆け引きやギミックがふんだんに使われており、なかなか面白く読める。

★★★(3.0)

 

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