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死者の金を巻き上げて鎮魂! 幽霊相手の詐欺に奮闘するお人好し主人公-『幽霊詐欺師ミチヲ』

『幽霊詐欺師ミチヲ』

黒史郎/2011年/269ページ

借金を苦に自殺しようとしていたところ、カタリという謎の男に声をかけられた青年ミチヲ。聞けばある仕事を引き受ければ、借金を肩代わりしてくれるという。喜ぶミチヲだったが、その仕事とは、失意の果てに命を絶った女の幽霊を惚れさせ、財産を巻き上げることだった!かくして幽霊とのデートの日々が始まるが…はたして幽霊相手の結婚詐欺の結末は!?究極のウラ稼業“チーム・ミチヲ”が動き出す!痛快感動暗黒事件簿。

(「BOOK」データベースより)

 

 自殺しようとしていたところを半ば強引な形で命を救われた主人公・ミチヲが、饒舌かつうさんくさい男・カタリ、でけぇ上に臭ぇ犬・カネコとチームを組み、幽霊相手に詐欺を行う…という変種のゴーストバスターもの。

 「赤い逢瀬」-幽霊詐欺師の初仕事として、トンネルに出没する女幽霊・マミコに結婚詐欺をしかけることに。血みどろグロ幽霊相手に「髪がきれいですね」「結婚を前提にお付き合いを」「お金を騙し取られて破産しました…」「母が病気で手術にお金が…」と首尾よく数千万円をゲットするものの、良心がとがめたミチヲはマミコに真相を告白してしまい…。

 「約束手形」-地縛霊となった子供が憑く家に潜入し、土地の権利を奪うことになったミチヲ。「子供はカレーが好き」等の雑なアドバイスをカタリから受け、幽霊屋敷と化した一軒家で子供の霊を相手にするのだが、完全に悪霊と化していた子供は関節をボキボキに外しに来るのであった。

 生者のような理屈が通じない霊相手に、どうコミュニケーションを取るのか…という過程がユニークが描かれる。ホラーと笑いと人情モノのバランスが絶妙で、お人よし極まりない小市民なミチヲ、鬼畜かつ傲岸不遜なカタリの対比もよい。作者の次作『怪談撲滅委員会』とはキャラの立ち位置やら境遇やらはほとんど同じな気もする。

★★★(3.0)

 

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