『現代百物語 終焉』
岩井志麻子/2018年/224ページ
すべてのものには終わりがくる。生命が終わり、死を迎えること―終焉。異世界の住人となった者たちに向かって飲み屋のママはこう語る。「あの世の人達って強い理由だけで出てこないし、正当な理由だけで動かない」。一方、現世を生きる者たちの中にも一般の理解の範疇を超えて怪異をもたらす人がいる。いずれが原因でも、身に降りかかった出来事に我々は寒気を覚えずにはいられない。約10年続いたシリーズ、ついに末期の最終巻!
(「BOOK」データベースより)
最終巻となる10冊目だが、シリーズの特徴でもある人の悪意や嘘、犯罪にまつわる話が非常に少なく、幽霊譚や不可解な話、超自然的な話が大部分を占めている。最後の最後にして「百物語」らしい構成になっていると言えるかも。一編一編がバラエティに富んでおり、大盤振る舞いといった雰囲気。
どの話もそれなりに面白いので、逆に際立った一編というものを挙げにくいが、タクシー怪談としてはトリッキーすぎる理不尽枠「第九十五話 ジャングルオバサン」、因縁があるんだかないんだかわからない怪異「第十六話 皮膚の真っ赤な人間」、死んだ犬を弔う際に妻の実家にまつわる衝撃の事実が明らかになる「第三十六話 埋葬」辺りはお気に入りの話。
それにしてもこの「現代百物語」シリーズ、作者の特色が非常に濃ゆく出ている異例の実話怪談集であった。ワイドショー的なゴシップネタが多かったり、作者に厄をもたらしたとんでもない嘘つきが準レギュラーとして登場したり、霊感の無さをアピールしていた作者が少なからぬ怪異に巻き込まれたり…。1話2ページ構成というテンポの良さも相まって大変楽しませてもらった。全990話。呪われそうな数だ。
★★★☆(3.5)