角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

シリーズ

贖罪のため善行を積む黒づくめ医師&元人間の鬼コンビの余話がイイ感じ-『幽落町おばけ駄菓子屋 晴天に舞う鯉のぼり』

『幽落町おばけ駄菓子屋 晴天に舞う鯉のぼり』 蒼月海里/2016年/202ページ 御城彼方は、大学2年生になった。生身の人間ながら、人ならざるものが住む常世の町「幽落町」に下宿して、2年目の春。のんびりキャンパスを歩いていたら、突然ハーレーに乗った都…

懐かしきアヤカシの町でのモラトリアム生活に別れを告げて…と思いきや、もうちっとだけ続くんじゃ-『幽落町おばけ駄菓子屋 春まちの花つぼみ』

『幽落町おばけ駄菓子屋 春まちの花つぼみ』 蒼月海里/2015年/201ページ 新しい年が明けた。冬から春に向かうにつれ、御城彼方の心にはチクチクと棘のように刺さるものがある。それは幽落町での生活のこと。去年の春、彼方は生身の人間でありながら常世の…

連続殺人をワインで強引解決! ソムリエ向け(?)非ホラーミステリ-『悪魔のワイン』

『悪魔のワイン』 和田はつ子/2006年/215ページ 第一の殺人現場には、血痕がついたブドウ畑の絵葉書が遺されていた。第二の殺人は、毒入りワインによるものだった。そして第三の殺人では、被害者の頭部が切断され、ワインで煮込まれていた。次々に起きる連…

秋葉原、東京メトロ、八王子を巡るレトロな妖怪散歩-『幽落町おばけ駄菓子屋 たそがれの紙芝居屋さん』

『幽落町おばけ駄菓子屋 たそがれの紙芝居屋さん』 蒼月海里/2015年/208ページ 秋が深まり、アヤカシの住む幽落町にも冬が近づいてきた。次の春までの期間限定で、渋々ながら常世の住人になったはずの御城彼方も、下宿アパートの大家さんで駄菓子屋“水無月…

アヤカシの美青年たちと名所めぐり。平和なもののけ東京ガイド-『幽落町おばけ駄菓子屋 夏の夜空の夢花火』

『幽落町おばけ駄菓子屋 夏の夜空の夢花火』 蒼月海里/2015年/192ページ 黄昏と境界の街、幽落町に夏がやってきた。訳あって1年間限定で、おばけや妖怪たちと同じ“常世の住人”になってしまった僕・御城彼方も、大学に入って初めての夏休みを満喫していた。…

詐欺師の霊に逆霊感商法で勝負! 順当に強敵が出てくるバトル展開な第2巻-『幽霊詐欺師ミチヲ 招かざる紳士淑女たち』

『幽霊詐欺師ミチヲ 招かざる紳士淑女たち』 黒史郎/2011年/248ページ 今晩、寝室に次々と女(幽霊)がやって来る。お前は彼女たちを抱きしめ、一人残らず昇天させてやるんだよ―図らずも幽霊詐欺師の道を歩き始めたミチヲは、怪しげなホテルで出会った謎のイ…

謎解き部分は少々無理があるが、新解釈されたアヤカシたちが魅力的なシリーズ-『幽落町おばけ駄菓子屋 思い出めぐりの幻灯機』

『幽落町おばけ駄菓子屋 思い出めぐりの幻灯機』 蒼月海里/2014年/205ページ 東京の有楽町と間違えて、おばけの町―幽落町に引っ越した僕・御城彼方。生身の人間なのに“あの世”と“この世”の中間の不安定な存在として、この町で1年間暮らさなければならなく…

曲者ホラー漫画家の怪演・狂演! パルプ感に満ちた楽しい1冊-『HOLYⅡ』

『HOLYⅡ ホラーコミック傑作選 第3集』 犬木加奈子、御茶漬海苔、風忍、谷間夢路、日野日出志/1996年/405ページ 日常と非日常が交錯する暗闇で、心の奥底に宿る残忍さと凶暴さが顔をのぞかせる…。狂気をはらみ、よこしまな計略を鮮烈に描くホラーコミック…

妖怪が棲む町を舞台に、心温まる謎解き物語。スレたホラー読者にはヌルいかも-『幽落町おばけ駄菓子屋』

『幽落町おばけ駄菓子屋』 蒼月海里/2014年/205ページ このたび晴れて大学生となり、独り暮らしを始めることになった僕―御城彼方が紹介された物件は、東京都狭間区幽落町の古いアパートだった。地図に載らないそこは、妖怪が跋扈し幽霊がさまよう不思議な…

属性盛り過ぎの女怪盗・黒蜥蜴のキャラクター性が強烈!-『黒蜥蜴 江戸川乱歩ベストセレクション⑤』

『黒蜥蜴 江戸川乱歩ベストセレクション⑤』 江戸川乱歩/2009年/221ページ 社交界の花形で、腕に黒いトカゲの刺青をしたその女は、実は「黒トカゲ」と呼ばれる暗黒街の女王、恐るべき女賊であった。とある宝石商が所有する国宝級のダイヤを狙う黒トカゲは、…

意外な巨匠たちの怪奇作品。菊地秀行の趣味全開、懐かし系コミックアンソロジー-『闇の画廊』

『闇の画廊 ホラーコミック傑作選第2集』 菊地秀行(選)/1996年/325ページ 闇に蠢く狂気と絶望、そして悲惨…。八人の巨匠が描くダーク・ギャラリー!! 時空を超えて、いま甦る傑作恐怖コミック集。〈収録作品〉関谷ひさし「恐怖の幻視人間ムーズ」武内つなよし…

真のジグソウ後継者がゲームオーバーを告げる。『4』から続く因縁がここに終結-『ソウ ザ・ファイナル ―SAW3D』

『ソウ ザ・ファイナル ―SAW3D』 行川渉(著)、パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン(原案)/2010年/230ページ ジグソウのゲームを生き残ったボビー・デイゲン。“サヴァイバー”としてマスメディアに取り上げられた彼は現代のイコンとして祭り上げられ…

痛さと痛快さはシリーズ随一、伏線回収でスッキリ。クライマックス間近!-『ソウ6 ―SAW6』

『ソウ6 ―SAW6』 行川渉(著)、パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン(原案)/2009年/249ページ FBI捜査官ストラムが死体となって見つかる。ジグソウの後継者と疑われていたストラムの死で、一連の事件に終止符が打たれたかのように思えた。しかし、ス…

ストーリーが凡庸なためノベライズ化しても面白みがイマイチ。シリーズの停滞期-『ソウ5 ―SAW5』

『ソウ5 ―SAW5』 行川渉(著)、パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン(原案)/2008年/237ページ 九死に一生を得て助かったFBI捜査官ストラムは、傷一つ負わずにゲームからサヴァイバルしてきたホフマン刑事こそジグソウの後継者ではないかと疑う。しか…

映画版とゲーム版の設定をうまくすり合わせた『Ⅱ』を忠実にノベライズ-『バイオハザードⅡ アポカリプス』

『バイオハザードⅡ アポカリプス』 キース・R・A・デカンディード(著)、富永和子(訳)/2004年/330ページ アリスは病院のベッドで目覚めた。T・ウイルスに汚染された“蜂の巣”から生還したのが三十六時間前。ラクーンシティはアンデッドたちの街と化していた…

前作で死亡しているにも関わらず、ゲームを完全に支配下に置くジグソウの影。サーガはなおも続く-『ソウ4 ―SAW4』

『ソウ4 ―SAW4』 行川渉(著)、パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン(原案)/2007年/255ページ ジグソウとアマンダは死んだ。ジグソウの遺体の中から発見されたテープが再生される。「私の仕事は続く。ゲームは始まったばかりだ」。ジグソウに関わっ…

死者の金を巻き上げて鎮魂! 幽霊相手の詐欺に奮闘するお人好し主人公-『幽霊詐欺師ミチヲ』

『幽霊詐欺師ミチヲ』 黒史郎/2011年/269ページ 借金を苦に自殺しようとしていたところ、カタリという謎の男に声をかけられた青年ミチヲ。聞けばある仕事を引き受ければ、借金を肩代わりしてくれるという。喜ぶミチヲだったが、その仕事とは、失意の果てに…

映画版よりグロ描写がマイルドになったぶん、登場人物のガバさが目立つ-『ソウ3 ―SAW3』

『ソウ3 ―SAW3』 行川渉(著)、ジェームズ・ワン、リー・ワネル(原案)/2006年/167ページ 女刑事ケリーは、小学校でおこった殺人現場に呼び出される。鎖に繋がれ、爆弾で飛び散っていた死体が行方不明となっていたエリック刑事でなかったことに、胸をなでお…

シリーズ初期作のミステリ要素はノベライズとも相性良し-『ソウ2 ―SAW2』

『ソウ2 ―SAW2』 行川渉(著)、ダーレン・リン・バウズマン、リー・ワネル(原案)/2005年/218ページ ある猟奇殺人事件の捜査にあたっていた刑事エリック。その陰惨極まる殺人現場を目にした彼の頭を、ひとつの名前がよぎる。「ジグソウ」。複数の犠牲者を出…

偉大なるデスゲーム映画の第1作目を卒なくノベライズ。原作履修済みでも退屈はしない出来-『ソウ ―SAW』

『ソウ ―SAW』 行川渉(著)、ジェームズ・ワン、リー・ワネル(原案)/2004年/183ページ 老朽化したバスルームで目覚めた二人の男。足首は頑丈な鎖で繋がれ身動きがとれない。二人の間には血みどろの自殺死体とテープレコーダー、一発の銃弾、そして二本のノ…

恋のライバルがいいヤツ過ぎて困惑する主人公。ミステリとしても恋愛物としても安定の好シリーズ-『ホーンテッド・キャンパス 桜の宵の満開の下』

『ホーンテッド・キャンパス 桜の宵の満開の下』 櫛木理宇/2013年/344ページ 幽霊が視えてしまう体質の大学生、八神森司。その能力を生かし(?)、オカルト研究会で、美少女こよみに密かに片想い中。しかしオカ研には、恐怖の依頼が続々と、凍死寸前の男が訴…

連続少女殺人犯“芸術家”を追い詰める、検死官&法医昆虫学者!-『パンドラ 猟奇犯罪検死官・石上妙子』

『パンドラ 猟奇犯罪検死官石上妙子』 内藤了/2017年/336ページ 検死を行う法医学部の大学院生・石上妙子。自殺とされた少女の遺書の一部が不思議なところから発見された。妙子は違和感を持つなか、10代の少女の連続失踪事件のことを、新聞と週刊誌の記事…

芥川、鴎外、太宰、漱石…「現代ホラー」と呼んでいいのか悩む文豪揃いのアンソロジー-『森の聲』

『森の聲 現代ホラー傑作選第5集』 内田康夫(編)/1995年/290ページ 数々の名作を生んだ十一人の巨匠が、混迷の時代に神火を灯す森羅万象の世界。収録作品芥川龍之介「妖婆」石川淳「灰色のマント」泉鏡花「化鳥」折口信夫「神の嫁」川端康成「片腕」小泉八雲「青柳の…

最後の最後にして百物語らしくなった(?)大盤振る舞いの最終巻-『現代百物語 終焉』

『現代百物語 終焉』 岩井志麻子/2018年/224ページ すべてのものには終わりがくる。生命が終わり、死を迎えること―終焉。異世界の住人となった者たちに向かって飲み屋のママはこう語る。「あの世の人達って強い理由だけで出てこないし、正当な理由だけで動…

嘘つきエピソード大解放! 虚飾と欺瞞にまみれた不実な人々のオンパレード-『現代百物語 不実』

『現代百物語 不実』 岩井志麻子/2017年/224ページ 「自殺した彼女の人生を代わりに生きています」――滔々と壮絶な体験を語る作家志望の女。傷害事件にまで発展した気まぐれの作り話。芸人が体験した3つの謎と符合する実際の陰惨な話。息を吐くように嘘を…

陰で暗躍する獣と、陰でしか生きられないけだもの。これぞ乱歩中の乱歩!-『陰獣 江戸川ベストセレクション④』

『陰獣 江戸川ベストセレクション④』 江戸川乱歩/2008年/204ページ 探偵作家の寒川に、資産家夫人、静子が助けを求めてきた。捨てた男から脅迫状が届いたというが、差出人は人気探偵作家の大江春泥。静子の美しさと春泥への興味で、寒川は出来るだけの助力…

文庫版最終巻にして、メンバーの過去にまつわる話を集めた入門篇。続きはコミックスで-『黒鷺死体宅配便 5』

『黒鷺死体宅配便 5』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2009年/174ページ 死体専門のダウジング能力を持つ沼田真古人は、幼いころ、その技術を教えてもらった師匠と再会を果たす。しかしそれは悲しい別れの始まりだった――!? “お届け物は死体です”。死んだ…

エピソードのトンデモぶりが極まった傑作巻。あまり死体を宅配してない気もするが…-『黒鷺死体宅配便 4』

『黒鷺死体宅配便 4』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2009年/218ページ あいかわらず仕事に恵まれない「黒鷺死体宅配便」のメンバーたちは、村起こしを目的としたミステリーサークル作りのアルバイトをしていた。偶然にもこの村には、40年ほど前に墜落し…

そもそも死体から依頼を受けてもたいして金にならないのでは? と今さら気づく第3巻-『黒鷺死体宅配便 3』

『黒鷺死体宅配便 3』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2008年/188ページ 「頼む、カラダを戻してくれ」……死体からしか聞こえないはずの声が、死ぬ間際のホームレスから聞こえてきた。壊死した腎臓が病院で摘出され、ホームレスは息を引き取った。声はどう…

やっぱり「生きてる人間のほうが怖い」のか。原点に立ち返った粒揃いの1冊-『現代百物語 因果』

『現代百物語 因果』 岩井志麻子/2016年/209ページ ダイヤが原因で滅びてしまった一家。夫が妻に語ったある夏の出来事。後輩に対して威圧的な振舞いを続けた男の末路。混線した電話から小さく聞こえる誰かの会話。欲望に支配された人の心の闇は深い。その…