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秋葉原、東京メトロ、八王子を巡るレトロな妖怪散歩-『幽落町おばけ駄菓子屋 たそがれの紙芝居屋さん』

『幽落町おばけ駄菓子屋 たそがれの紙芝居屋さん』

蒼月海里/2015年/208ページ

秋が深まり、アヤカシの住む幽落町にも冬が近づいてきた。次の春までの期間限定で、渋々ながら常世の住人になったはずの御城彼方も、下宿アパートの大家さんで駄菓子屋“水無月堂”の店主でもある水脈さんや、その仲間たちとの生活に、すっかり馴染んでいた。そんなある日のこと、彼方は池袋の公園で、水脈さんの過去を“印旛沼の龍の昔話”として子供らに語って聞かせる謎の紙芝居屋さんと出会って…。シリーズ第4巻!

(「BOOK」データベースより)

 

 「第一話 うしなわれたばしょ」は、移り変わり激しい秋葉原の在りし日を振り返りつつ、万世橋駅や交通博物館なども登場する本作らしいレトロ回。新キャラの正体不明な紙芝居屋・蘇芳も顔見せ。「第二話 にくしみのつづき」は、肝臓大好きの変態かと思われていた白髪白衣の犯罪医師・都築が再登場。彼が肝臓を切り取って集め回る理由が明らかになる。こんな怪しい人物にも哀しき過去…。東京の地下鉄事情にも詳しくなれる一編。「第三話 おおみそかのよるに」は、八王子で大みそかに行われるという“狐の行列”を見物しつつ、狐と化かし合い勝負をしたりする平和なお話。

 レトロ趣味を前面に押し出した、シリーズらしい作風を存分に味わえる一方、ドクターキリコみたいなライバルキャラかと思われていた都築が単なるツンデレへと変貌。新キャラを出すタイミングと解決の仕方は見事な手際です。

★★★(3.0)

 

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