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懐かしきアヤカシの町でのモラトリアム生活に別れを告げて…と思いきや、もうちっとだけ続くんじゃ-『幽落町おばけ駄菓子屋 春まちの花つぼみ』

『幽落町おばけ駄菓子屋 春まちの花つぼみ』

蒼月海里/2015年/201ページ

新しい年が明けた。冬から春に向かうにつれ、御城彼方の心にはチクチクと棘のように刺さるものがある。それは幽落町での生活のこと。去年の春、彼方は生身の人間でありながら常世の住人になった。でも、その契約期間は1年。約束の期限がもうすぐ切れようとしているのだ。下宿アパートの大家で駄菓子屋“水無月堂”店主の水脈さんは、生者の彼方がこれ以上、常世の幽落町にいてはいけないと言うけれど…。シリーズ第5巻!

(「BOOK」データベースより)

 

 1巻からほぼ1年が経過、主人公の彼方が幽落町から去る日が近づいていた。「第一話 むこうぎしへ」は、前巻の大晦日の直後、年明けから始まる浅草散策。スカイツリーで福袋を買ったりしつつ、霊の未練も解決してめでたし。「第二話 おにやらい」では、鬼を払う鬼こと「方相氏」の新キャラである忍と出会う彼方。上野の五條天神社で節分の儀式を見物するかたわら、「みはし」のあんみつを食べたりする。「第三話 ぼくのいばしょは」では、これ以上幽落町に住み続けると完全に常世の住民になってしまう…というわけで、引越しを決意する彼方の前に謎の紙芝居屋・蘇芳が再び登場。過去の街並みとその思い出が人を縛る…というのは、これまでいろいろな土地でレトロな東京見物をしてきた本シリーズの締めにふさわしい「ラスボス」と言えよう。

 お話し的には一区切りついており、これで最終巻でもまったく違和感のないエンディングではあるが、本シリーズはまだまだ続くのだった。

★★★(3.0)

 

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