『ゾク こわい本5 怪1』
楳図かずお/2025年/336ページ
ほほほ。わたしは きれいなのがきらいなのさ。お前にこぶをうつしてやる
いとこのアグリの家に世話になるため引っ越してきた優子。アグリには顔にこぶがあり、何かにつけて優子にいじわるをするのだった。アグリはこぶを取ろうとして画策するが……「人こぶの怪」。子供を授からなかった夫婦がひきとった愛娘のおみつ。美しく成長したが病に倒れ、マッチとろうそくを一緒に埋めるようにと庭の一角におみつを葬った。やがて新しく養女を家に迎え入れるのだが、夜な夜な庭から近づくろうそくの火……「おみっちゃんが今夜もやってくる」。吹雪のため山荘に閉じ込められた5人。眠ったら死ぬと怪談話を続けるのだが、ある秘密を話してしまったとき怪異が発動し――「怪談」。
(Amazon解説文より)
「人こぶの怪」-家庭の事情で、いとこのアグリの家に住むことになった優子。頬の大きなこぶがコンプレックスのアグリは、何かと優子に嫌がらせを繰り返す。ついには短刀でこぶを切り落とし、流れ出る血を優子にこすりつけて彼女にこぶを伝染させようとするアグリ。こぶ自体はきれいに落とすことができたが、その痕に人面瘡ができてしまう…。
この手の漫画だと「優子が自分の顔に起きた変化に恐れおののいて…」となるのが王道だが、今回に関してはすべてがアグリの思い込みというのがちょっと新しい。内面の醜さが外見に変化を及ぼす…という展開自体は、楳図怪奇漫画ではおなじみではある。
「おみっちゃんが今夜もやってくる」-若くして病死した少女・おみつは、自分が死んだら亡骸をマッチとロウソクと共に庭に埋めてほしいと頼んでいた。両親はおみつの言う通り庭に墓を建て、庭に面した部屋をガラス張りにして見通せるようにした。しばらく後、両親は身寄りのない少女・比奈子を新しい家族として迎えいれる。庭に面したガラス張りの部屋を与えられ、新しい生活を始める比奈子。だがある夜、腐れ落ちた恐ろしい形相の少女の霊が現れ、「でていけ! お前はこの家の娘ではない」と告げる…。
おみっちゃんの顔がとにかく怖すぎ。大ゴマ連発で迫力がある一方、ページ稼ぎ感もちょっと…。霊があまりに狭量なうえ、救いのない結末になってしまうため後味は悪い。それにしてもラスト1コマの楳図先生のセリフ、一瞬「なるほど…?」と思ってしまったが、冷静に考えるとまったく意味不明である。そんなわけなくない?
「怪談」-猛吹雪の中、山小屋に閉じ込められた5人の男女が、眠ってしまわないように一人ずつ怪談を披露していく。とある洋館で出会った老婆に、夜な夜な生き血を吸われる悪夢を見る少女の話。鬼の面に取り憑かれ、旺盛な食欲を発揮するようになった老婆の話。柳の化身に魅入られた男の話。猛吹雪の山の中で、女に姿を変える人喰い雪を目撃した話。だが最後の話を語り終えたとたん、「どうしてあんな話をしたの」と訴える声が…。
楳図先生は「雪女」の話がお好きらしく、この話もその亜種と言える。1つ1つの怪談は短めであまり印象に残らないが、〆はお約束とは言えなかなか恐ろしい。角川ホラー文庫『赤んぼう少女』にも収録されている。
秋田書店で刊行されていた『怪』のリマスター版。これまで電子書籍化されていなかった『怪』が電書でも読めるという意味では貴重である。ただ個人的には小粒な印象で、「必読!」と言えるほど推せるタイトルはないなというのが正直な感想。巻末のUMEZZギャラリーに載っている、秋田コミックスセレクト版『怪』の表紙イラストはエグくて良いですね。
★★☆(2.5)

