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オーソドックス、かつバラエティに富んだ手堅い実話怪談集。やや手堅過ぎか?-『S霊園 怪談実話集』

 『S霊園 怪談実話集』

福澤徹三/2019年/192ページ

教師が命を絶つ前に黒板に書いた記号が蘇る「先生踏切」、廃屋で見つけた謎の木箱が恐怖をもたらす「あにもの」、ある滝にまつわる怪談実話が時を経てシンクロする「滝の帰りに」、通夜の会食のあと記憶が消える「お斎のあと」、真夜中に鳴るインターホンの秘密が恐ろしい「黒い縦線」、心霊スポットとして名高い霊園にまつわる怪異を描く「S霊園」など40篇。平凡な日常生活に忍び込む怪異の数々に、じわじわと背筋が寒くなる

(「BOOK」データベースより)

 

 『怖の日常』と同じく雑誌「幽」の連載をまとめたもので、実質的に『怖の日常』の続編にあたる。非常にオーソドックスな実話怪談集ではあるが、“よくあるタイプの話”もシチュエーションの語り方がうまく飽きさせないし、実話怪談ならではの“理屈も何もない理解不能な話”もそこそこ収録されており、無難に楽しめる1冊と言える。

 私的なベスト3をあげるなら、記憶喪失の彼女を心配する男を襲う壮絶などんでん返し「失踪」、古典的な因果応報譚ながら語り口のうまさに恐怖が募る「傘をさす女」、なんだか厭だが何が厭なのかわからない実話怪談らしい実話怪談「ベランダの写真」だろうか。

★★★(3.0)

 

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