角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

最後の最後にして百物語らしくなった(?)大盤振る舞いの最終巻-『現代百物語 終焉』

『現代百物語 終焉』 岩井志麻子/2018年/224ページ すべてのものには終わりがくる。生命が終わり、死を迎えること―終焉。異世界の住人となった者たちに向かって飲み屋のママはこう語る。「あの世の人達って強い理由だけで出てこないし、正当な理由だけで動…

小説・エッセイ・評論・コミック、古今東西の髪の毛にまつわる恐怖がぞわりと集う-『黒髪に恨みは深く』

『黒髪に恨みは深く 髪の毛ホラー傑作選』 東雅夫(編)/2006年/347ページ 髪は神に通ずる―古来、毛髪には玄妙不可思議な力が宿ると考えられてきた。豊かに波うつ女性の黒髪は、エロチックな美の象徴となり、恐るべき妄念の化身ともなって、多くの怪談やホラ…

サクサク軽く読める一方でじっとり重い、「男と女」を書き続けてきた著者ならではの自選集-『指先の戦慄』

『指先の戦慄』 新津きよみ/2010年/288ページ 萌子は、かつて夫だった男と待ち合わせをしていた。折り入って相談があるというのだ。萌子の親友と不倫関係になり、やがて彼女を捨てて親友と結婚した男は、弱りはてた様子で、一度妻と会ってくれないかと持ち…

原発事故で引き裂かれた双子姉妹。汚染区域でサバイバルする少年少女。鮮烈な結末を迎える異形の傑作-『プルトニウムと半月』

『プルトニウムと半月』 沙藤一樹/2000年/293ページ 原子炉の爆発がきっかけで、双子の姉妹・華織と紗織は別々の家に預けられた。しかし失意の華織は自殺の名所とも呼ばれる放射能汚染地域へと自ら踏み込んでしまう。立入禁止の汚染地域で生き長らえる華織…

一読の価値あり、ホラーファン必携の入門書。充実度なら角川ホラー文庫版一択-『ホラー小説大全〔増補版〕』

『ホラー小説大全〔増補版〕』 風間賢二/2002年/441ページ モダンホラーが席巻した八〇年代。それはS・キングという稀有な才能が捲き起した一大ムーブメントだった。日本では“ホラー=恐い”という単純な括りで消費されがちだが、欧米作家たちはさらなるジャ…

他人の家庭事情から垣間見える漆黒。小説2編は傑作だが、コミック7編の印象がイマイチ薄め『ワイドショー』

『ワイドショー 内田春菊ホラー傑作選』 内田春菊/2004年/236ページ 気がつくと、ワイドショーを見ていないのは私だけだった。「なんで見ないの?」と訝しがられるがそれって、そんなに変なことなの?遊びに行った恋人の家にも、ワイドショーを見る母親が。…

犯人も探偵役も被害者も全員病み過ぎ、サイコ揃いのサイコミステリ-『ママに捧げる殺人』

『ママに捧げる殺人』 和田はつ子/2004年/220ページ 女子大生の愛奈は、家事をこなし、家族の面倒を見る真面目な学生と思われていた。だが、彼女自身は母親に厳しい監視を受けていた。下着からアクセサリー、スカートや化粧品まで、愛奈の身につけるものは…

嘘つきエピソード大解放! 虚飾と欺瞞にまみれた不実な人々のオンパレード-『現代百物語 不実』

『現代百物語 不実』 岩井志麻子/2017年/224ページ 「自殺した彼女の人生を代わりに生きています」――滔々と壮絶な体験を語る作家志望の女。傷害事件にまで発展した気まぐれの作り話。芸人が体験した3つの謎と符合する実際の陰惨な話。息を吐くように嘘を…

陰で暗躍する獣と、陰でしか生きられないけだもの。これぞ乱歩中の乱歩!-『陰獣 江戸川ベストセレクション④』

『陰獣 江戸川ベストセレクション④』 江戸川乱歩/2008年/204ページ 探偵作家の寒川に、資産家夫人、静子が助けを求めてきた。捨てた男から脅迫状が届いたというが、差出人は人気探偵作家の大江春泥。静子の美しさと春泥への興味で、寒川は出来るだけの助力…

20年前の“いじめ”の恨みが爆発する復讐サスペンス…かと思いきや、予想外過ぎる真相に困惑-『卒業』

『卒業』 吉村達也/2002年/180ページ 高校卒業の日、積年の怨みを自殺という形であてつけようと、伊豆山中に死に場を求めた神保康明は、そこで奇妙な老人と少女に会う。「二十年後を待て」それが老人の放ったメッセージ。死を思いとどまった康明は、やがて…

文庫版最終巻にして、メンバーの過去にまつわる話を集めた入門篇。続きはコミックスで-『黒鷺死体宅配便 5』

『黒鷺死体宅配便 5』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2009年/174ページ 死体専門のダウジング能力を持つ沼田真古人は、幼いころ、その技術を教えてもらった師匠と再会を果たす。しかしそれは悲しい別れの始まりだった――!? “お届け物は死体です”。死んだ…

SF、伝奇、サスペンス、時代物、中国史…幅広いスタイルで恐怖を描く佳品ぞろい-『したたるものにつけられて』

『したたるものにつけられて 自選恐怖小説集』 小林恭二/2001年/237ページ ふとした出会いから日常が歪み、狂いゆく過程を静かに追う表題作「したたるものにつけられて」。ほか、伝説の女形・沢村田之助の鬼気迫る恋物語「田之助の恋」、世界の終末を描くS…

エピソードのトンデモぶりが極まった傑作巻。あまり死体を宅配してない気もするが…-『黒鷺死体宅配便 4』

『黒鷺死体宅配便 4』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2009年/218ページ あいかわらず仕事に恵まれない「黒鷺死体宅配便」のメンバーたちは、村起こしを目的としたミステリーサークル作りのアルバイトをしていた。偶然にもこの村には、40年ほど前に墜落し…

強引極まりないデスゲーム。壮大なオチとゲーム内容との釣り合いが…-『放課後デッド×アライブ』

『放課後デッド×アライブ』 藤ダリオ/2012年/320ページ 「あなたたちはアセンションされました。これから、命をかけたゲームをやってもらいます」クラスで忘年会をしていた高校3年生の啓太たちは、突然不気味な仮面の人物によって体育館に監禁される。ここ…