角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

そもそも死体から依頼を受けてもたいして金にならないのでは? と今さら気づく第3巻-『黒鷺死体宅配便 3』

『黒鷺死体宅配便 3』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2008年/188ページ 「頼む、カラダを戻してくれ」……死体からしか聞こえないはずの声が、死ぬ間際のホームレスから聞こえてきた。壊死した腎臓が病院で摘出され、ホームレスは息を引き取った。声はどう…

やっぱり「生きてる人間のほうが怖い」のか。原点に立ち返った粒揃いの1冊-『現代百物語 因果』

『現代百物語 因果』 岩井志麻子/2016年/209ページ ダイヤが原因で滅びてしまった一家。夫が妻に語ったある夏の出来事。後輩に対して威圧的な振舞いを続けた男の末路。混線した電話から小さく聞こえる誰かの会話。欲望に支配された人の心の闇は深い。その…

死体を甦らせてまた殺す葬儀屋VS死体宅配便。死者蘇生能力がニッチな商売に!?-『黒鷺死体宅配便 2』

『黒鷺死体宅配便 2』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2008年/218ページ 死体の声を聞き、その依頼に応じて報酬を得る黒鷺死体宅配便。手違いから死刑囚の死体を手に入れた唐津。その死体の望みは、殺してしまった一家の、生き残った子供に会って謝ること…

謎が謎を呼ぶ寒村の因習。土着的なテーマを意外性たっぷりのミステリとして捌く好短編集-『私の骨』

『私の骨』 高橋克彦/1997年/287ページ 実家の床下から偶然見つかった古びた壷。中には朽ち果てた人骨が詰まっていた。そして、その壷には何故か私の生年月日が記されていた。それでは…自分は、いったい誰なんだ。三十数年前の自身の揺るがざる死亡証拠を…

死体にまつわるスペシャリスト達が、死体の最期の望みを叶えます。内容はともかくなぜホラー文庫?-『黒鷺死体宅配便 1』

『黒鷺死体宅配便 1』 原作:大塚英志、漫画:山崎峰水/2006年/253ページ 死体の声を聞くイタコ、死体を探すダウジング、死体修復のエンバーミング、情報収集のハッキング、宇宙人と交信するチャネリング。それぞれ特技をもった仏教大学の学生5人が作った…

怪談同士の有機的な絡み合いが読み応えを増す、実話怪談集として究極に近い1冊-『拝み屋怪談 禁忌を書く』

『拝み屋怪談 禁忌を書く』 郷内心瞳/2016年/293ページ 最期まで優しい母として逝った依頼主、忌まわしき白無垢姿の花嫁、昵懇の間柄だったひと、心に怪物を抱えた女――。四人の女性の存在と彼女たちとの顛末を中心に、現役の拝み屋が体験・見聞した最新怪…

悪ふざけギリギリのアイデアに満ちた、笑いに特化したホラー短編集-『夏合宿』

『夏合宿』 瀬川ことび/2001年/206ページ 中学二年生の俊輔は、たったひとりで剣道部の合宿へむかうところだった。夏期講習に参加したため、みんなと一緒に出発できなかったのである。合宿先は毎年恒例の、貸し別荘が点在する避暑地だったが、剣道部が借り…

幽霊なみに話が通じない、理解不能・コミュニケーション不能な人間の恐ろしさ!-『現代百物語 妄執』

『現代百物語 妄執』 岩井志麻子/2015年/224ページ 刑務所で病に伏せる罪人に高額な医療費を送りつける逆・死神。古書店で入手した一般人の日記帳に綴られた壮絶な書き込み。ファンから著者に贈られた鍵と簡素な地図。女性ライターの股間に憑いたインチキ…

“読者視点”がいちばん残酷。歪みきった愛はかえって純愛なのか-『恋愛禁止』

『恋愛禁止』 長江俊和/2023年/256ページ 瑞帆の前に現れた3人の男――。1人は、ある時期、彼女の世界の中心だった。だが、いつしか愛情は憎しみに変わり、口論の末、彼を衝動的に殺してしまう。発覚を恐れた瑞帆だったが、一向に殺人は露呈しない。そのこ…

明智小五郎入門編。一時の享楽と長年の怨讐、正反対の性質を持つ2つの怪事件-『屋根裏の散歩者 江戸川乱歩ベストセレクション③』

『屋根裏の散歩者 江戸川乱歩ベストセレクション③』 江戸川乱歩/2008年/241ページ 世の中の全てに興味を失った男・郷田三郎は、探偵・明智小五郎と知り合ったことで「犯罪」への多大な興味を持つ。彼が見つけた密かな楽しみは、下宿の屋根裏を歩き回り、他…

あまりにも主人公がクズ過ぎるタイホラー映画のノベライズ。そりゃ霊だって怒るよ!-『心霊写真』

『心霊写真』 行川渉(著)、パークプム・ウォンプム、バンジョン・ピサンタナクーン(原案)/2006年/158ページ パーティの帰り、道を横切る女を車で撥ねてしまった、カメラマンのタンと恋人のジェーン。恐怖に駆られ、動かぬ人影を残し、二人はそのまま走り去…

無数の実話怪談で綴られる作者の半生。拝み屋を志すきっかけに度肝を抜かれる-『拝み屋怪談 逆さ稲荷』

『拝み屋怪談 逆さ稲荷』 郷内心瞳/2015年/272ページ 如何にして著者は拝み屋と成り得たのか―。入院中に探検した夜の病院で遭遇した“ノブコちゃん”。曾祖母が仏壇を拝まない理由。著者の家族が次々に出くわす白い着物の女の正体とは。霊を霊と認識していな…

犯人は噛ませ犬感が強いが、新展開のプロローグとしては上々-『BACK 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子』

『BACK 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子』 内藤了/2016年/288ページ 12月25日未明、都心の病院で大量殺人が発生との報が入った。死傷者多数で院内は停電。現場に急行した比奈子らは生々しい殺戮現場に息を呑む。そこは特殊な受刑者を入院させるための特別病棟が…

特殊能力を持った犯罪者たちが目ん玉ギラギラ出走です! 大荒れレースの結末は…-『人間競馬 悪魔のギャンブル』

『人間競馬 悪魔のギャンブル』 山田正紀/2010年/254ページ 新宿副都心。ビルとビルの隙間にわずかな時間立ち現れる古い城郭。空の高みで人間競馬に興じるガーゴイルたち。下界では、三人の男と一人の女がパドックを周回する競走馬さながらに互いを尾行し…