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無数の実話怪談で綴られる作者の半生。拝み屋を志すきっかけに度肝を抜かれる-『拝み屋怪談 逆さ稲荷』

『拝み屋怪談 逆さ稲荷』

郷内心瞳/2015年/272ページ

如何にして著者は拝み屋と成り得たのか―。入院中に探検した夜の病院で遭遇した“ノブコちゃん”。曾祖母が仏壇を拝まない理由。著者の家族が次々に出くわす白い着物の女の正体とは。霊を霊と認識していなかった幼少期から、長じて拝み屋開業にいたるまで、人ならざるモノと付き合い続けた恐怖の半生記をここに開陳。自身や家族の実体験のみならず、他者への取材をもとにした怪異譚を併せて収録する、かつてない怪談実話集! 

(「BOOK」データベースより)

 

 作者の幼少期の体験から、拝み屋という職業を志すまでの半生を、数々の奇怪なエピソードと、それに関連する第三者の実話怪談を交えて描く。一編一編を実話怪談として楽しめると同時に、全体として1つの大きな物語になっているという構成はこの作者ならではの離れ業。終盤で明かされるとある衝撃的な事実には誰もが驚くだろう。ややもすればヒロイックに過ぎる『花嫁の家』と比べると、個人的には本作で語られる実話怪談は温度感がちょうどよくて好みである。

 終盤の「同じものを見ている」から「虚しき流れ」までのエピソードは本書の白眉だが、いかにもな病院の怪談「ノブコちゃん」、新種の妖怪としか言えない「目玉男」「あばら男」「やぶ寿司」「田んぼのおじさん」といった話はインパクトが強い。タイトルにもなっている「逆さ稲荷」は、忌まわしい雰囲気の語感とは裏腹にほっこりする話である。“逆さ稲荷”自体のビジュアルも含めてこれまた印象深い。

★★★★☆(4.5)

 

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