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犯人は噛ませ犬感が強いが、新展開のプロローグとしては上々-『BACK 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子』

『BACK 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子』

内藤了/2016年/288ページ

12月25日未明、都心の病院で大量殺人が発生との報が入った。死傷者多数で院内は停電。現場に急行した比奈子らは生々しい殺戮現場に息を呑む。そこは特殊な受刑者を入院させるための特別病棟があり、狙われたのはまさにその階のようだった。相応のセキュリティがあるはずの場所でなぜ事件が?そして関連が疑われるネット情報に、「スイッチを押す者」の記述が見つかり…。大人気シリーズは新たな局面へ、戦慄の第7弾!

(「BOOK」データベースより)

 

 ラストに向けての新展開への繋ぎ、のような中編。今回の真犯人(…?)は「ローン・ウォリアー」。受刑者のみが入院している病棟に潜入し、受刑者たちを次々と処刑していった無慈悲な殺人者である。のだが、これまでの犯人たちに比べると小物感が目立つ。それもそのはず、彼のBACKにいる何者かの存在とその目的が終盤で明らかになるからで、ローン・ウォリアー自体は動機も安易なら行動もガバガバな噛ませ犬でしかないのだ。

 猟奇描写も謎解きも控えめな一方で、比奈子の先輩である東海林、前回の事件で登場した永久、類稀なる才能の持ち主であることが改めて浮き彫りとなった野比先生こと中島保など、レギュラー陣の見せる新たな動向は見逃せない。クライマックスへ期待を持たせるプロローグとしては上々の一編ではなかろうか。

★★★(3.0)

 

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