『拝み屋念珠怪談 緋色の女』
郷内心瞳/2021年/304ページ
数多の怪談実話を収集し、自らも恐るべき怪異と向き合ってきた、東北の拝み屋・郷内心瞳。
ある日、かつて将来について相談を受けた女性と再会し、何冊ものノートを手渡される。
過去の郷内の勧めにしたがい、三年半かけて二百話もの怪談を蒐集したというのだ。
それも、数珠繋ぎのごとく、話を聞いた怪談の体験者の紹介で、さらに他の怪談の体験者に取材するという奇怪な形式で。
ノートには、いくつもの怪異や、説明のつかない奇妙な体験がびっしりと記録されていた。
さらに怪談の記録をひもといていくと、郷内は信じられない恐るべき符合に気付く。
拝み屋郷内を戦慄せしめた、禁断の最恐怪談が今、明かされる。
(Amazon解説文より)
著者のかつての依頼客・祐木真希乃が蒐集した「怪談ノート」に記された怪談を、著者が再構成した実話怪談集。取材させてもらった人から新たな怪談の体験者を紹介してもらうという、念珠のごとく連なる不思議な縁の賜物である。
著者自身の体験や、霊障に悩む人々の依頼が中心だったこれまでの「拝み屋怪談」シリーズと比べると、怪談のバリエーションが幅広く、語り口も新鮮に感じられる。いずれも「ぎりぎりありそうなリアリティ」と「突拍子もない斬新さ」の塩梅がちょうどよく、楽しく読むことができる。祐木の怪談蒐集のきっかけとなった「お化けのいる家」や、「葡萄の娘」「湖姫さん」といったやや長めのエピソードも興味深い。
が、しかし。読み進めていくうちにぼんやりと感じる妙な既視感。クライマックスの「スノーホワイト」によってそれは決定的となり、読者は著者と共に「またかよ!」という思いを抱くことになる。新シリーズかと思いきやまだまだ過去作を引きずっているのはどうかと思うが、個々の怪談自体のクオリティは高いし、提示された「謎」も次巻が気になり過ぎる内容になっている。なんともズルい1冊だ。
★★★★(4.0)