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幾多の怪談の中で、姿を変え何度も現れる謎の女たちの正体は?-『拝み屋念珠怪談 奈落の女』

『拝み屋念珠怪談 奈落の女』

郷内心瞳/2022年/400ページ

かつての相談客・裕木が拝み屋・郷内のもとへ持ち込んだ、200話にも及ぶ生々しい怪談実話。
突如校庭に現れた生首、遊びに誘いにくる死んだはずの子供。写真に写り込んだ、異様な巨体をもつ女……。
奇怪な記録を読み進めるうちに、郷内は複数の怪談に繰り返し登場する不気味な女の影に気づく。
一連の「念珠怪談」に隠された、ある驚愕の真相とは――。

これは読む者を奈落の底へと突き落とす「生きた怪異」、その後半の記録である。

(Amazon解説文より)

 

 前作『拝み屋念珠怪談 緋色の女』の直接的な続編である。祐木が集めた怪談の中に、同一人物と思われる女性がたびたび登場していることに気づいた著者。それも複数人、少なくとも3名。直接的な接点がないはずの人々から、繰り返し同じ人物の話が出てくるはずがない。偶然では片づけられない、何らかの理由がある…? 手掛かりを求めて、著者は裕木の記した怪談ノートの続きを読み始めるのだった。

 

 実話怪談のオーソドックスな形に回帰した新シリーズ…かと思いきや、なんだかいつもの感じの作者お得意の妄想大戦(実話怪談と銘打っている以上、そうとしか表現しようがない)に突入してしまった。それはそれで面白いのだが、「幾多の怪談の中に潜む意外な共通点」を見つけ出す楽しみがあった前作とは異なり、今回は「緋色の女」関連、すなわち本筋に関わるキーとなる怪談と、そうでない怪談の扱いの差が激しい気がする。怪談の内容自体もなんだかボンヤリしており(この「不作続き」もギミックとして扱われてはいるのだが)、どうもピンと来る話が少ない。

 裕木本人の‟封じられていた記憶”にまつわる話、怪談内に何度も出てきた‟3人の女”の正体が明らかになる話、裕木が怪談自体に魅入られていく過程などは確かにスリリングなのだが、個人的には前作の雰囲気が好きだったのでちょっと肩透かしではあった。念珠怪談はまだまだ続くようで、これまた先が気になる引きにはなっている。

★★★(3.0)

 

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