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あまりにベタな因習村ホラーの裏に、幾重もの罠が仕掛けられる!-『ナキメサマ』

『ナキメサマ』

阿泉来堂/2020年/352ページ

高校時代の初恋の相手・小夜子のルームメイトが、突然部屋を訪ねてきた。音信不通になった小夜子を一緒に捜してほしいと言われ、倉坂尚人は彼女の故郷、北海道・稲守村に向かう。しかし小夜子はとある儀式の巫女に選ばれすぐには会えないと言う。村に滞在することになった尚人達は、神社を徘徊する異様な人影と遭遇。更に人間業とは思えぬほど破壊された死体が次々と発見され…。大どんでん返しの最恐ホラー、誕生!第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞・読者賞受賞作。

(「BOOK」データベースより)

 

 初恋相手の葦原小夜子が、故郷の村に帰ったきり音信不通になったらしい。小夜子のルームメイトだと名乗る女性・有川弥生は倉坂尚人の部屋を訪れ、小夜子の安否を確かめるため稲守村へ同行してほしいと頼み込む。両親を失った小夜子にとって、頼れるのは高校時代の元カレである倉坂しかいないのだという…。2人は稲守村に到着するが、小夜子は「ナキメサマの儀式」の巫女を務めるため、誰とも会うことはできないと親族に言われてしまう。

 村に着いたその夜、白無垢を着た不気味な怪異と遭遇する2人。さらにはホラー作家を名乗る変人・那々木悠志郎とオカルト雑誌編集者・佐沼が村に来訪、ナキメサマの儀式についての調査を始めるが、村人たちは露骨にその態度を硬化させる。そして那々木たちの到着後、村では両目を抉られた無惨な死体が発見され…。果たしてナキメサマとは何者なのか、儀式の目的とは何なのか。姿を現さない小夜子は何をさせられようとしているのか。怪異を知る者、那々木悠志郎がたどり着いた真実とはいったい…?

 

 非常にベタベタな「因習村ホラー」である。怪異を実体験して作品に取り入れることがポリシーの変人・那々木悠志郎は(ちょっと岸部露伴が入り過ぎな気もするが)、当事者と傍観者のちょうど間くらいの立場で話を展開してくれる面白いキャラクターだ。怪しさ全開の村人たち、白無垢の花嫁姿の怪異・ナキメサマのパワフル過ぎる肉体損壊描写、二転三転の畳みかけるようなどんでん返しの連続とサービス精神は特盛。描写にやや不自然な点が目立つため、スれた読者は「最大のどんでん返し」については早い段階で気がついてしまいそうである。とは言え、さすがにこの幾重にも仕掛けられたトリックをすべて看破することは難しいだろう。小難しいことは考えず、シンプルに楽しみたい1冊。

★★★(3.0)

 

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