『Q eND A(キュー エンド エー)』
獅子吼れお/2024年/272ページ
生きのこれるのは、早押しクイズで勝ち残ったひとりだけ――!
高校生の芦田エイは、気づくと20数名の見知らぬ人たちと白い部屋に閉じ込められていた。すぐに彼らの前に宇宙人のような生き物が現れ、ゲームについての説明を始める。困惑する参加者たちに告げられたのは、早押しクイズのラウンドを勝ち抜いたひとりだけが脱出できること、参加者それぞれにクイズで有利となる異能力が授けられていること。そして、クイズに負けたもの、異能力が他の人に指摘された参加者は死ぬこと――。
エイは自分に授けられた異能力が、クイズの答えが分かる最上位の「アンサー」だということを知る。これがばれたら、生きては帰れない……。能力がばれないようにクイズを勝ち残るべく、知略を巡らせるエイの前に立ちはだかるのは、天上キュウ。職業は、クイズ王。果たしてエイはキュウを超え、このゲームを勝ち残ることができるのか――? ハラハラの新感覚デスゲーム小説。
(Amazon解説文より)
高校生・芦田叡(あだ名:A)と幼なじみのストリート系女子・御巫ミラ、級友のゴスロリ娘・汀マイカたち26名は、「オラクル」を名乗る謎の存在によってデスゲームに参加させられる。ゲームの内容は早押しクイズで、敗北したものは頭部が弾けて死亡、最後に残った1名のみが脱出できる。さらに彼らにはA~Zの頭文字で始まる異能力が与えられ、他人に能力を看破されたものも死亡する。能力は1人死亡するたびに1つずつ開示されていく。ゲーム開始前に開示された最初の能力は“アンサー(Anser)”、クイズの答えが事前にわかるというチート能力である。
そして始まる死の早押しクイズ。問題を聞くだけで答えが頭に浮かぶことに驚いたAは、自分こそが“アンサー”の能力者なのだと推察するが、そんな彼の頭にミラが“テレパス(Telepath)”の能力で話しかけてくる。自分の考えをミラに知られてしまったAだが、彼らは協力してデスゲームを生き残ることを決意する。だが彼らの前に立ちふさがるのは、クイズ王を自称する“Q”こと天上キュウ。能力を使わないまま、圧倒的な実力で難問に答えていくキュウは自らを中心とした派閥を形成。2人1組で答えるタッグクイズが始まり、キュウ信奉者たちはキュウのアドバイスのもと、異なる能力を組み合わせたコンボで正解を重ねていく。A、ミラ、マイカは頭脳とカリスマ性を持ち合わせた最強のクイズ王にどう立ち向かうのか…?
角川ホラー文庫「デスゲーム小説コンテスト」の大賞受賞作。枠組みが完成され過ぎているため、中身のゲームを変えただけでもそこそこ読めるモノに仕上がってしまうデスゲーム小説だが、本作はさすが一味も二味も違う。「わかりやすいルール」と「頭脳戦の奥深さ」を両立し、予想を裏切りつつも王道の展開は外さないというエンタメ性に溢れた傑作だ。
デスゲームが始まるまでの展開はサラリと流し、ゲーム自体も「先にクイズに答えれば勝ち」というシンプルさで冒頭からすんなり入り込める。各人に与えられた異能力もクイズに関係するものばかりで、ボタンを押すと時間を5分間止める“ストップ(Stop)”、死亡した時にクイズをやり直すことができる“ループ(Loop)”、ラウンドごとに1度相手の能力を知ることができる“ホロスコープ(Horoscope)”などいかにもヤバげなものもあるのだが、「強力な能力ほど他人に看破されやすい」というバランスの取り方のおかげで理不尽さが薄い。単なる知識勝負になりかねないクイズに戦略性と公平性をプラスし、問題の答えだけでなく相手の能力を推察するという面白さも生み出している。能力のコンボという概念はいかにもゲーム的だが、これも「最終的には裏切ることになるかもしれないが、当座の目標のため協力せざるを得ない」というデスゲームの醍醐味をより深めてくれる。設定の端々から、作者がこの題材を知り尽くしたうえで、その面白さを引き出そうとしていることが窺える。良い。デスゲーム小説の作者もゲームマスターも信頼が大事。
級友らとの脱出を目指すA、「クイズそのものが楽しいから」という理由を掲げて場を引っ掻き回すQのほか、ゲーム外で殺人を犯す奴、意味ありげな双子といったある意味お馴染みのキャラクター、さらにはデスゲームをはじめとする異常犯罪を取り締まる警視庁の特殊チームも登場。残された能力者の数に反比例して作品のボルテージはどんどん上がっていく。そして「オラクル」の正体が判明し、すべての事態に見事な決着がつくラスト。これがまた素晴らしい。なんとなくデスゲーム小説は強引極まりないかモヤモヤ系のオチにしかならない印象があったが、本作に対してその心配は無用である。
・目次クイズの答え
A1. A
A2. 『みつどもえ』
A3. 駄目
A4. ■■■■
★★★★☆(4.5)

