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全部読めるといいですね。読んだ上で、おすすめしたい作品は全力で推します。

「法で守られた殺人鬼」が、法で裁くまでもない人々を愉快に拷問殺!-『殺人勤務医』

『殺人勤務医』

大石圭/2002年/308ページ

中絶の専門医である古河は、柔らかい物腰と甘いマスクで周りから多くの人望を集めていた。しかし彼の価値観は、母親から幼いころに受けた虐待によって、大きく歪んでいた。食べ物を大切にしなかった女、鯉の泳ぐ池に洗剤を撒いた男。彼は、自分が死に値すると判断した人間を地下室の檻に閉じ込め、残忍な手段で次々と殺していく。猟奇の陰に潜む心の闇をリアルに描き出した気鋭の衝撃作。

(「BOOK」データベースより)

 

 著者お得意の「容姿端麗で社会的地位も財産もあって、何ひとつ不自由していないシリアルキラーの優雅な殺人生活」パターンの1冊。本作の主人公は堕胎専門の産婦人科医で、自らを「法律で許された殺人鬼」と嗤う。法で裁かれない悪人たち(せいぜい径犯罪者)を地下室に監禁して拷問殺害しているのだが、一方、虐待されている幼女や飼い犬に関しては憐れみを見せて救い出す(親や飼い主をブチ殺す)といった一面も見せる。その辺も含めて大石圭作品ではよくあるタイプの主人公と言える。
 終盤で彼が殺害を決めた「あの人」の正体は意外性がなく、ラストもぼんやりした破滅の予感を漂わせて終わるのみ(これもいつものパターン)。主人公がアホどもに下す拷問シーンを楽しむだけの作品だが、それでじゅうぶんと言う気もする。

★★★(3.0)