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ひだりをタブー視する町の血塗られた歴史。町がクソ過ぎるせいで大惨事に思わず喝采!-『ひだり』

『ひだり』

倉阪鬼一郎/2009年/313ページ

比陀理神社では、巫女のアルバイトをしていた短大生が怪死し、ジョギング中の男が突然死する事件が相次いだ。この神社には、「鳥居は必ず右足からまたぐべし」という掟があったのだ。比陀理中学に転校してきた言美は、この町では校庭の陸上トラックも路線バスもなぜか右回りであることを不思議に思い、その由来を調べ始める。どうやら、この町では「左」が封印されているらしい。そして、血塗られた町の歴史が新たな惨劇を呼ぶ。

(「BOOK」データベースより)

 

 なぜか「ひだり」を忌まわしいものとする比陀理町に、なんの因果か苗字が「左」の一家が越してくる。時を同じくして、ひだりの禁忌を破ったよそ者が惨死する事件・事故が頻発。被害者はみな、体のひだり半分が著しく損壊されていた…。

 劇中で言及されている『悪魔の収穫祭』のような、土着信仰を題材としたホラー。過去作で登場したイエニョン、八神は実際には現場を訪れないチョイ役としての登場に留まるが、本書を読み終えればそれで来なくてよかったと思えるはず。この比陀理町を襲う怪異はシリーズ随一の大惨事で、彼らが巻き込まれていたら無事では済まなかっただろう。個人的にはもっと主人公・言美の学校での生活や、言美の両親の心変わりの過程などに描写を割いてほしかった気もするが、本作では次々と人がグロ死する景気のよさのほうを取ったようだ。比陀理町がとにかくクソ過ぎるので、ラスト付近では怪異の方を応援してしまう。怒りが恐怖を上回る珍しいホラーである。

★★★☆(3.5)