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封印解かれし「異形の神」の芸術が人間界を狂気で塗りつぶす!-『白い封印 美術調律者・影』

『白い封印 美術調律者・影』

著者名/2013年/277ページ

異形の天才芸術家にして父・黒形上との二度の対決を経て、ついに過去、自分の身に起こった忌まわしい事件を思い出してしまった影。さらに、家系にまつわるある血の因縁の存在を知る。そんな中、黒形上が遺した呪いの原型を使い、世界の破滅を企む崇拝者が再び現れて……。父と息子の闘いの行方は!? シリーズ最高潮の第3弾!

(Bookデーターベースより)

 

 異形の芸術家・黒形上赤四郎の信奉者である藁木玲は、自身が経営するペンションの各所に黒形上の作品を掲げていた。黒形上が好んだモチーフ、「白い方形」にまつわる作品は宿泊客の精神を蝕み、やがて狂気へと陥らせていく。それに飽き足らなくなった藁木は、ワインやジャムの通販客に呪われた「白い方形」のカードを送り付けるという無差別呪術テロを開始。黒形上の息子・形上影と、彼を補佐するチーム美島の面々は、いち早く藁木の正体を見抜き彼に接触を試みる。だが、これまでにない強力な呪いに返り討ちにされ、とうとう身内から犠牲者を出してしまう。

 仇討ちを誓う影は、三たび姿を現した黒形上と直接対決へ。そして形上家の陰惨かつ壮絶な過去と、人知を超えた恐るべき正体が明らかになっていく…。

 

 過去作では黒形上にいいようにあしらわれてきた影だが、本作では父に一矢報いるまでに成長を遂げている。ようやくタイトルの「美術調律者」が回収されたと言えるだろう。物語の大枠は過去二作と同じ展開で、特撮番組的な様式美すら感じられるが、今回は形上家の呪われた血筋が語られる点が大きな転換点である。黒形上赤四郎こと形上四郎の兄弟たちもまた、芸術の道を志したが、いずれも悲惨な最期を迎えていた。彼らが信仰していた「一にして全なる神」とはいったい何者なのか…。角川ホラー文庫での本シリーズは今巻が最後となるが、完結編となる『大いなる闇の喚び声 美術調律者、最後の戦い』は創土社の〈クトゥルー・ミュトス・ファイルズ〉から発売されている。…となればもう、その正体はおわかりだろう。小説のみならず絵画、彫刻、映画、音楽といった様々な芸術で描かれてきた“かの神々”。最終巻では、その存在感を大いに示してくれるに違いない。

★★★(3.0)

 

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