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手塚治虫のホラー漫画なんて大量にあるんだし、もうちょいコンセプトを絞れなかったものか-『人面瘡』

『人面瘡 ~手塚治虫怪奇アンソロジー~』

手塚治虫/1998年/362ページ

心の奥底に潜む黒い欲望故に、二重人格となった殺人鬼。その顔のできものにブラック・ジャックの奇跡のメスが入る「人面瘡」、自然破壊による大地の怒り「白縫」、ささやかな幸せを求め二千年の時空を超えて蘇った少女の悲哀「生けにえ」など、人間の本性と癒しを鮮烈に描いた怪奇コミック傑作集。(解説・石黒達昌)

(文庫裏解説より)

 

 巻頭・表題作は『ブラック・ジャック』のトラウマ作品の1つ「人面瘡」でツカミは抜群。個人的には見開きの迫力と美しさに息をのむ「白縫」、お岩さんと隻眼の少年のちょっとエッチなほのぼのコメディ「四谷快談」、キメ顔に楳図かずお臭を感じる「新・聊斎志異 お常」などが掘り出し物であった。

 手塚治虫の怪奇作品なんて大量にあるに決まっているんだし、SFホラーだの伝奇ホラーだのエロチックホラーだの、もうちょっとコンセプトを絞ってもよかったのではないか。個々の作品は面白いのだが、「手塚怪奇漫画の代表作!」と打って出すにはいささか弱い気もする。できれば選定理由を知りたかったところ。あと『ブラック・ジャック』はともかく、『ブッキラによろしく!』『I.L』から一編を収録するのなら作品解説を入れてもバチは当たらないと思う。

 

・収録作一覧

「人面瘡」(『ブラック・ジャック』より)

「ドラキュラVSカーミラ」(『ドン・ドラキュラ』より)

「呪いの百円玉」(『ブッキラによろしく!』より)

「深夜のヒトダマ」(『ミッドナイト』より)

「白縫」(「ライオンブックス」より)

「マネキン」(『I.L』より)

「処刑は3時に終わった」

「白い幻影」

「生けにえ」(『ザ・クレーター』より)

「新・聊斎志異 お常」

「四谷快談」

★★★(3.0)

 

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