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様々な視点から読み解ける名作群。圧倒的な絵のパワーに改めて感銘を受ける-『のろわれた手術』

『のろわれた手術(オペ) ~手塚治虫怪奇アンソロジー~』

手塚治虫/1995年(復刊:2023年)/362ページ 

※復刊版表紙

漫画の神様が遺した十二の恐怖マンガアンソロジー。ホラー漫画の原点!

表題作となったブラック・ジャックの奇跡の手が、千五百年前のミイラの呪いを解く「のろわれた手術」、「愛する子馬と引き離され、人間への復讐に燃え妖馬となった悲しみの物語「妖馬ミドロ号」、写楽クンが三つ目一族の謎に挑む「寿命院邸の地下牢」など、手塚治虫が描いたホラー傑作ホラー漫画。解説は鈴木光司。装いを新たに復刊!

(Amazon解説文より)

 

 角川ホラー文庫で本書より後に出た手塚怪奇アンソロジー『人面瘡』と比べると、連載モノでも前情報が無くとも理解しやすい話が多い。手塚治虫を知らない人でもすんなり読めるのではなかろうか。戦争の恐怖が色濃い「溶けた男」「猫の血」「新・聊斎志異 女郎蜘蛛」、手塚先生本人が語り部となる軽妙な怪談「怪談雪隠館」「夜の客」、飛行機内で逃げ出した1匹の大グモが乗客たちの本性を暴き出すサスペンス「ジャムボ」と、個人的に好みの作品が多く嬉しい1冊。それにしても改めてというか今さらというか、手塚治虫の圧倒的な漫画の上手さ、構図の巧みさには恐れ入る。「溶けた男」「猫の血」の痛々しいラスト、「新・聊斎志異 女郎蜘蛛」で幾度となく現れる戦闘機の緊迫感、「夜の客」のコマの枠線省略の大胆さ、「新・聊斎志異 叩建異譚」の生首乱舞シーンの迫力、いずれも「絵」としてのパワーがすさまじい。

 やはり作品のセレクト基準は少々謎ではあるものの、「手塚作品はどのような切り口から眺めても面白い」という、万能すぎる気もするがまことに説得力のある鈴木光司の解説のおかげか、それなりにまとまっている1冊という気がする。鈴木浩司は「死」という切り口から全編を読み解いているが、氏の言うように「生き物」に注視してもいいし、「歴史」「手塚治虫本人」という観点からも解説は成り立ちそうだ。

 2023年1月に新装版発売。1995年版と比べると価格が倍近くになっている。ホント高くなったね、文庫本。

 

・収録作一覧

「のろわれた手術」(『ブラック・ジャック』より)

「溶けた男」(『ザ・クレーター』より)

「蛾」(『I.L』より)

「猫の血」(『空気の底』より)

「妖馬ミドロ」(『どろろ』より)

「怪談雪隠館」(『サイテイ招待席』より)

「夜の客」

「新・聊斎志異 女郎蜘蛛」

「ジャムボ」

「寿命院邸の地下牢」(『三つ目がとおる』より)

「深夜の囚人」(『ミッドナイト』より)

「新・聊斎志異 叩建異譚」

★★★☆(3.5)

 

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