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ド安定の怪奇ゴシップエッセイ。知ったのを後悔する厭な芸能界話も…-『現代百物語 殺意』

『現代百物語 殺意』

岩井志麻子/2013年/224ページ

不思議な偶然が繰り返される女。いつの間にか入れ替わってしまった噂話。淫猥な生霊。延々と食べ続ける女。歪んだ正義感に駆られた人々の暴走。風に乗って窓から入ってくる「死んじゃえば?」というささやき声…。ある日ふと感じた不安や違和感の正体は、もしかするとあなたに向けられた強烈な殺意かもしれない。著者が各所で聞き集めた奇妙な話の中から、選りすぐられた99話を収録。大好評の実話怪談シリーズ、第5弾。

(「BOOK」データベースより)

 

 シリーズ第5弾。サクサク読めるうえにバラエティに富んでいて面白いのだが、あまりに安定し過ぎていて本書ならではの特色を書くのに困ってしまう。特に「殺意」がクローズアップされているわけでもないし、もはやレギュラーキャラとなった作者の過去の知り合いも相変わらず出てくるし。

 前半に収録されている話は印象に残るものが多く、「第十四話 AVと怪談の共通点」「第十八話 得体の知れない何か」は、”怪談”とは、“恐怖”とは何かという作者の視点が垣間見えて面白い。AVと怪談の共通点、なかなか思いつくものでは無いと思うが、なるほどの感心してしまう。「第十五話 罵られた男」はネットに関するトラブル話かと思いきや推察でしかないオチが異様に怖い。「第二十五話 401号室の女」「第七十話 猛烈に冷酷な目」に登場するあまりにも理解しがたい行動原理の人々も不気味極まりなく、この2話は特に恐ろしい。芸能界の闇、という題材もこのシリーズではおなじみだが、「第十九話 入れ替えられた噂」はちょっとケタが違うというか、洒落にならないドス黒い闇を感じる。聞いたことを後悔するレベルかもしれない。ああ厭だ。

★★★(3.0)