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全部読めるといいですね。読んだ上で、おすすめしたい作品は全力で推します。

業の深い人勢ぞろい! 俗っぽくも恐ろしく、どこか可笑しい99の現代怪談-『現代百物語』

『現代百物語』

岩井志麻子/2009年/224ページ

屈託のない笑顔で嘘をつく男。出会い系サイトで知り合った奇妙な女。意外な才能を見せた女刑囚。詐欺師を騙す詐欺師。元風俗嬢が恐怖する客。殺人鬼を取り押さえた刑事。観光客を陥れるツアーガイド。全身くまなく改造する整形美女。特別な容姿をもっていると確信する男女たち…。いつかどこかで耳にした、そこはかとなく不安で妙な話。実際に著者が体験、伝聞した実話をもとに、百物語形式で描く書き下ろし現代怪談。

(「BOOK」データベースより)

 

 全10巻のヒットシリーズになった岩井志麻子による百物語集。見開き2ページで完結する短い話が99編+あとがきという構成になっている。

 いわゆる「実話怪談」とは少々異なり、心霊や怪奇現象にまつわる話は全体の2割も無いかもしれない。どちらかと言うと「業の深い人々」についてのエッセイという感じ。やたら顔文字をメールに使うおじさん、まったく漫画を描かない漫画家志望、やたら喧嘩を吹っかけてくる婆さん、明らかに騙されているのに詐欺師を信じ続ける人…。いずれも見方を変えれば滑稽であると同時にホラーになり得る。男と女の関係についての話も多く、全体的な俗っぽさが痛快ですらある。

 全編、すべてが一定以上に面白い百物語というのも珍しいが、怖さだけで言えば「第二十話 女心から発生した悪意」「第五十二話 自分は特別でなければならない」辺りにぞっとさせられたが、「第七十七話 背後で電話を切った相手」がぶっちぎりだと思う。出版業界では都市伝説とまで化しているという話で、正直この一編だけ群を抜いている。怖さと別の視点からで言えば「第四十五話 『マヨイガ』のような女」はマヨイガという怪談への新解釈もあって興味深かった。

★★★★(4.0)