『ホーム アウェイ』
森村誠一/2006年/201ページ
都心から離れた郊外で、念願のマイホームを手に入れた鶴川一家。初めは豊かな自然に囲まれ満足していたが、すぐに何かがおかしいことに気づく。ごみの収集がこない。テレビも映らない。バスも通っていない。しかも、住民は何故か老人ばかり。この完全な陸の孤島で、一家は恐怖の陥穽に嵌りこんでいく――。現代の病、人間の闇を描破したサスペンス・ホラー。
(「BOOK」データベースより)
東京郊外の自然に囲まれた団地に引っ越した鶴川一家。大枚をはたいて購入した念願のマイホームだったが、人が来なさ過ぎて開発計画が打ち切られ、予定されていたコンビニもスーパーも診療所も学校も一向に建つ気配がないまま陸の孤島と化していた。住民はどんどん孤独死していき、入り込んだホームレスが火事を起こし、果てには暴走族のたまり場と化す。だが暴走族が貼られたワイヤーで事故死したのをきっかけに、さらに不穏な雰囲気が立ち込める。暴走族に火炎瓶を投げ込まれ窒息死した独居老人。ワイヤー事故の犯人像をつかんだ後に行方不明になった女。そして団地とは離れた場所で起きた轢き逃げ事件と、幼女の水難事故。一見、関係なさそうな幾多の事件が、ある刑事の推察のもと、一本の糸でつながれていく。
せっかく購入した新居がとんでもないハズレ物件だった…というのは割と切実な恐怖で、舞台となる団地のあまりの荒廃ぶりに「そうはならんやろ」と思いつつも、どこか否定しきれない妙なリアリティがある。物語は中盤からミステリの様相を呈しはじめ、冒頭で書かれた本編と関係なさそうな事件(あまりにも無関係っぽいので、本書を短編集なのかと勘違いしたくらい)が、とある人物を中心に紐づけられていく過程がなかなかスリリング。「そっちの方向に行くんだ」と面食らいはしたが、単なるミステリではなく確かに“ホラー"であった。何らかの澱みを感じさせる集落というのはよくあるネタだが、それが団地というのは意外に珍しいアイデアである。
★★★(3.0)