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絶望的な結末が救いに見えるほどに、悲惨極まりないトラウマ作品-『灰になる少年 ~ジョージ秋山恐怖劇場~』

『灰になる少年 ~ジョージ秋山恐怖劇場~』

ジョージ秋山/1997年/393ページ

「おまえが幸せに暮らせるのも、今のうちだぜ」――。潮少年は見知らぬ男に囁かれた言葉が耳から離れない。お手伝いさんの首なし殺人事件が恐怖へのプロローグなのか!? 潮少年に迫る恐怖「灰になる少年」と人間の心の中に生じる邪悪を描いた「フィッシュ・ラーゲ」を収録。闇を裂く傑作恐怖コミック。

(Amazon解説より)

 

 ジョージ秋山先生の漫画にしてはめずらしく、投げっぱなしの伏線などもなくちゃんと完結している。ジョージ秋山初心者にも安心してオススメできる傑作である…と言い切りたいのだが、正直なところあまり自信がない。初心者向けのジョージ秋山作品など存在しない気もする。まあそれはそれとして、本作が優れた社会派ホラーミステリであることは間違いない。

 

 やさしいパパとママの元で幸せに暮らす少年がふと抱く、「ひょっとしたらパパは人殺しなのでは…?」という疑問。お手伝いさんの首なし死体にはじまり、ママに睡眠薬を飲ませて連れ去るパパ、ヤクザ風の男、公害病、またもや現れる首なし死体と、話は不幸と絶望をつるべ打ちにしつつ進んでいき、タイトル通りの結末を迎える。あまりにショッキングな展開が続くため、この虚しいラストすらも、少年にとっては救いだったのではないかと思える。まったく救いのない結末ではあるが、“灰になる”という最期は普通の人間となんら変わりのないものとも言える。せめて魂よ安らかにあれ。

 後半は長編『フィッシュ・ラーゲ』の1エピソードのみが収録されている。フィッシュという名の幼女が巨大な精子に追われる様が延々と続き、正直言ってここだけ読んでもまったく意味が分からない。なぜここを切り取ったのか。

 

 正直なところ「フィッシュ・ラーゲ」部分は余計と言えば余計なので、今から読むのであれば電子書籍の復刻版『灰になる少年』でじゅうぶんだろう。

★★★★(4.0)

 

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