角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

“読者視点”がいちばん残酷。歪みきった愛はかえって純愛なのか-『恋愛禁止』

『恋愛禁止』 長江俊和/2023年/256ページ 瑞帆の前に現れた3人の男――。1人は、ある時期、彼女の世界の中心だった。だが、いつしか愛情は憎しみに変わり、口論の末、彼を衝動的に殺してしまう。発覚を恐れた瑞帆だったが、一向に殺人は露呈しない。そのこ…

明智小五郎入門編。一時の享楽と長年の怨讐、正反対の性質を持つ2つの怪事件-『屋根裏の散歩者 江戸川乱歩ベストセレクション③』

『屋根裏の散歩者 江戸川乱歩ベストセレクション③』 江戸川乱歩/2008年/241ページ 世の中の全てに興味を失った男・郷田三郎は、探偵・明智小五郎と知り合ったことで「犯罪」への多大な興味を持つ。彼が見つけた密かな楽しみは、下宿の屋根裏を歩き回り、他…

あまりにも主人公がクズ過ぎるタイホラー映画のノベライズ。そりゃ霊だって怒るよ!-『心霊写真』

『心霊写真』 行川渉(著)、パークプム・ウォンプム、バンジョン・ピサンタナクーン(原案)/2006年/158ページ パーティの帰り、道を横切る女を車で撥ねてしまった、カメラマンのタンと恋人のジェーン。恐怖に駆られ、動かぬ人影を残し、二人はそのまま走り去…

無数の実話怪談で綴られる作者の半生。拝み屋を志すきっかけに度肝を抜かれる-『拝み屋怪談 逆さ稲荷』

『拝み屋怪談 逆さ稲荷』 郷内心瞳/2015年/272ページ 如何にして著者は拝み屋と成り得たのか―。入院中に探検した夜の病院で遭遇した“ノブコちゃん”。曾祖母が仏壇を拝まない理由。著者の家族が次々に出くわす白い着物の女の正体とは。霊を霊と認識していな…

犯人は噛ませ犬感が強いが、新展開のプロローグとしては上々-『BACK 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子』

『BACK 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子』 内藤了/2016年/288ページ 12月25日未明、都心の病院で大量殺人が発生との報が入った。死傷者多数で院内は停電。現場に急行した比奈子らは生々しい殺戮現場に息を呑む。そこは特殊な受刑者を入院させるための特別病棟が…

特殊能力を持った犯罪者たちが目ん玉ギラギラ出走です! 大荒れレースの結末は…-『人間競馬 悪魔のギャンブル』

『人間競馬 悪魔のギャンブル』 山田正紀/2010年/254ページ 新宿副都心。ビルとビルの隙間にわずかな時間立ち現れる古い城郭。空の高みで人間競馬に興じるガーゴイルたち。下界では、三人の男と一人の女がパドックを周回する競走馬さながらに互いを尾行し…

彼岸此岸をたゆたう何者かの声。シリーズの中では比較的刺激強めの1冊-『現代百物語 彼岸』

『現代百物語 彼岸』 岩井志麻子/2014年/224ページ 庭にある鳥の巣箱に棲みついた邪悪な目。絶対に語ってはいけない話。聞いてはいけない話。書いてもいけない話。こちらが生きていることに気付かない、死者。霊を届ける女、受け取る男。「真っ黄色のワン…

耽美・グロに特化した、ディープなオーケンファンに(のみ)刺さるコミック-『ステーシー』

『ステーシー』 原作:大槻ケンヂ、漫画:長田ノオト/2001年/182ページ ――近未来。一五歳から一七歳の少女が原因不明の死をとげ、人間を襲う屍体となって蘇る現象が世界中で蔓延していた。彼女らは“ステーシー”と呼ばれ……。大槻ケンヂ入魂の純愛ホラー小説…

「法で守られた殺人鬼」が、法で裁くまでもない人々を愉快に拷問殺!-『殺人勤務医』

『殺人勤務医』 大石圭/2002年/308ページ 中絶の専門医である古河は、柔らかい物腰と甘いマスクで周りから多くの人望を集めていた。しかし彼の価値観は、母親から幼いころに受けた虐待によって、大きく歪んでいた。食べ物を大切にしなかった女、鯉の泳ぐ池…

陸の孤島と化した町で、闇に紛れ襲い来る謎の怪物。いくらでも面白くなるシチュエーションなのに…-『夜』

『夜』 赤川次郎/1997年/297ページ 突如襲った激しい大地震。住民が「町」と呼んでいる新興住宅地の道路が遮断され、十五軒の家が完全に孤立した。日が暮れ、月も星もない完全な闇が町を支配する。閉鎖された極限状況の中で、人々の精神は少しずつ狂い始め…

ミステリの重鎮が集うアンソロジー。恐怖度薄めでも掘り出しもの多数-『悪夢十夜』

『悪夢十夜 現代ホラー傑作選第4集』 夏樹静子(編)/1993年/322ページ 闇夜をますます深くする十の悪夢。古今の名作の中から選びぬかれた、逸品揃いの恐怖小説集。 収録作品 赤川次郎「私だけの境界線」 江戸川乱歩「恐ろしき錯誤」 木々高太郎「文学少女」 小池…

進化した人類(寄生獣+スパイダーマン)の異形アクションバトル、完結-『心臓狩り ③異形の領域』

『心臓狩り ③異形の領域』 梅原克文/2011年/281ページ 雅之と同じく、移植によって“シャーマン”となった秀人は、人間の心臓からその記憶や特技を吸収するという禁忌の行為を繰り返す存在―“羅刹”と化し、さらなる力を得ようと、同じ一族の舞や玲子に襲いか…

ぱらいそさいくだ! 阿部寛まんまの稗田礼二郎が登場する、映画版「生命の木」ノベライズ-『奇談』

『奇談』 行川渉(著)、諸星大二郎(原作)/2005年/155ページ 子供の頃に神隠しにあった大学院生・佐伯里美。しかし、彼女にはその頃の記憶がない。失われた記憶を求めて東北の「隠れキリシタンの里」を訪ねた彼女は、異端の考古学者・稗田礼二郎と出会う。十…

“ホラーコメディ”ではなくあくまで“コメディホラー”。幅広い芸風に唸るデビュー作-『お葬式』

『お葬式』 瀬川ことび/1999年/197ページ 授業中に突然鳴り出したポケベルの電子音。あわてて見た液晶画面に表示されたメッセージは『チチキトク』。病院で、豪華なカタログをかかえてやってきた葬儀社を丁重に追い返して母は言った。「うちには先祖伝来の…