角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

夢の未来で描かれる絶望の家族模様。人の業と想いは永遠に変わることなく…-『ファミリーランド』

『ファミリーランド』 澤村伊智/2022年/320ページ ホラー小説大賞&日本推理作家協会賞受賞作家が、令和元年にお届けする最も恐いSF小説集。スマートデバイスで嫁を監視する姑、高級ブランド化する金髪碧眼のデザイナーズチャイルドと育児ハザード、次世代…

夢野久作入門と呼ぶにはハードルが高い気もするが、セレクト自体は納得のボリューミーな1冊-『あやかしの鼓』

『あやかしの鼓 夢野久作怪奇幻想傑作選』 夢野久作/1998年/416ページ 鼓作りの男が想い焦がれた女性へ、嫁ぐ時に贈った自作の鼓。その音色は尋常とは違い、皆を驚かせた。それは恐ろしく陰気な、けれども静かな美しい音であった…。夢と現実とが不思議に交…

新居のお悩み解決が、日本軍と聖遺物を巻き込む壮大な風水バトルに発展!-『ワタシnoイエ』

『ワタシnoイエ シム・フースイ Version1.0』 荒俣宏/1993年/465ページ 新しい家にカビが異常に繁殖する。妻がノイローゼになり困り果てた小林正彦は、半信半疑で風水師・黒田龍人の事務所の扉を叩いた。風水師は土地や建物を看て吉凶を判断し、適切な処置…

元ネタへの深い理解度に感謝感激。あまりに理想的なトリビュート作品集-『犯罪乱歩幻想』

『犯罪乱歩幻想』 三津田信三/2021年/336ページ “退屈病”に冒された青年が、引っ越し先の部屋で感じた異変の数々(「屋根裏の同居者」)。ある日突然届いたのは、猟奇を楽しむ、特別な倶楽部の招待状だった(「赤過ぎる部屋」)。G坂に住むミステリ作家志望の“…

冒涜的死体損壊オブジェを作成する「ZERO」の正体は…次巻へ続く!-『ZERO 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』

『ZERO 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』 内藤了/2016年/249ページ 新人刑事・藤堂比奈子が里帰り中の長野で幼児の部分遺体が発見される。都内でも同様の事件が起き、関連を調べる比奈子ら「猟奇犯罪捜査班」。複数の幼児の遺体がバラバラにされ、動物の死骸…

ストーカーがあまりに異常すぎて、怖がるより先に笑ってしまう暴走スリラー-『初恋』

『初恋』 吉村達也/1993年/279ページ 浮気相手の女性につきまとわれたら、『危険な情事』の代償とあきらめもするが、三宅の場合は違っていた。職場結婚をし、平凡なサラリーマン生活を送っていた三宅の前に、ある日突然、中学校時代の同級生だった女性が現…

戦死者の生への執着が、家族を、現実を喰らい尽くす。エゴと怨情の食物連鎖!-『火喰鳥を、喰う』

『火喰鳥を、喰う』 原浩/2022年/352ページ 信州で暮らす久喜雄司に起きた二つの出来事。ひとつは久喜家代々の墓石が、何者かによって破壊されたこと。もうひとつは、死者の日記が届いたことだった。久喜家に届けられた日記は、太平洋戦争末期に戦死した雄…

安定の面白さだが、目玉である“黒いバス”はもはや実話怪談ではないのでは?-『怪談狩り 黒いバス』

『怪談狩り 黒いバス』 中山市郎/2021年/272ページ ある日突如現れる、黒いバスのような乗り物は、生者と死者の恨みを乗せて走る――今なお継続する怪異に震えが止まらない「黒いバス」他。本書収録作をまとめて読むことで恐怖が増す、本当に怖い怪談実話集…

これぞ典型的モダンホラー。夫をサタニストに乗っ取られた妻の絶望的な戦い-『悪魔のワルツ』

『悪魔のワルツ』 フレッド・M・スチュワート/1993年/337ページ 世界的な名ピアニスト、ダンカン・エリー。彼の弾くリストの名曲「悪魔のワルツ」は聴く者をとらえて離さなかった。ダンカンは偶然知り合ったマイルズを自分の息子のように溺愛し、彼に莫大…

家そのもの、または家族(家に棲む者)が怪異の元凶だったら…? グロ風味強めのパルプ短編集-『家に棲むもの』

『家に棲むもの』 小林泰三/2003年/251ページ ボロボロで継ぎ接ぎで作られた古い家。姑との同居のため、一家三人はこの古い家に引っ越してきた。みんなで四人のはずなのに、もう一人いる感じがする。見知らぬお婆さんの影がよぎる。あらぬ方向から物音が聞…

村上龍のカラーがよく出たセレクト。ホラーの印象薄めな作家陣だがクオリティは高い-『魔法の水』

『魔法の水 現代ホラー傑作選第2集』 村上龍(編)/1993年/250ページ 現在を呼吸する九人の作家によって切り拓かれる、魅力的で怖ろしい九つの物語。 収録作品 村上春樹「鏡」 山田詠美「桔梗」 連城三紀彦「ひと夏の肌」 椎名誠「箱の中」 原田宗典「飢え…

人々の恐怖を取り除き、救済もたらす穢れた天使。オカルトでバイオな超エンタメ-『天使の囀り』

『天使の囀り』 貴志裕介/2000年/526ページ 北島早苗は、ホスピスで終末期医療に携わる精神科医。恋人で作家の高梨は、病的な死恐怖症だったが、新聞社主催のアマゾン調査隊に参加してからは、人格が異様な変容を見せ、あれほど怖れていた『死』に魅せられ…

実話怪談の変化球。恐怖とユーモアに満ちた怪談作家の日常を描く私小説-『怪談稼業 侵食』

『怪談稼業 侵食』 松村進吉/2018年/288ページ ―これは、まともな稼業ではない。徳島で建設業に従事しながら怪異体験談を採集し、誌面に発表してきた著者。「怪談稼業」ともいうべき生業を12年間続けるうち、いつしかいくつもの影が心を侵蝕していって…。…

うかつな犯人vs頭のにぶい刑事vsその辺のキチガイ。盛り上がりに欠ける残念ミステリ-『人魚伝説』

『人魚伝説』 山村正夫/1995年/261ページ 『人魚姫』に憧れる13歳の少女、速水舞。彼女の恵まれた幸福な日々は、突如破られた。奇怪な欲望の手に捕らわれ、廃屋の地下室に監禁された舞が目にしたのは、永遠に物言わぬ人魚の姿だった…。常軌を逸した猟奇犯…