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うかつな犯人vs頭のにぶい刑事vsその辺のキチガイ。盛り上がりに欠ける残念ミステリ-『人魚伝説』

『人魚伝説』

山村正夫/1995年/261ページ

『人魚姫』に憧れる13歳の少女、速水舞。彼女の恵まれた幸福な日々は、突如破られた。奇怪な欲望の手に捕らわれ、廃屋の地下室に監禁された舞が目にしたのは、永遠に物言わぬ人魚の姿だった…。常軌を逸した猟奇犯罪が完成するとき、少女は“死”という名の究極の美に化身する―前例のない異様な事件に挑む刑事たちは、舞を無事救い出せるのか。緊迫のホラー・ミステリー。書下し。

(「BOOK」データベースより)

 

 医者の娘で豪邸暮らし、学校はミッション系スクールという分かりやす過ぎるお嬢様・速水舞が、人魚の剝製作りが趣味というキチガイに誘拐された。地下室に監禁された舞は絶望と恥辱の日々を送ることに…。一方、舞の身代金である1億円をまんまとだまし取られた警察は大恥をかき、「何よりも先んじて1億円の行方を探し出さなければならない!」などとブチあげる(誰もさらわれた少女のことを心配していない。薄情過ぎる)。

 シチュエーションと展開のベタさは官能小説かと思うほど。真犯人の正体はかなり早い段階で割れるし、犯行がガバ過ぎるうえ予想外のどんでん返しと言ったものはいっさい無い。読者が分かり切ったことをくどくど、ノロノロと推察する刑事たちにはイライラするし、そもそも人魚の要素が取って付けたレベルで本筋にはほとんど関係なく、プロローグでわざわざ引用されている「人魚姫」の物語はなんの暗示にも象徴にもなっていない。小手先だけで書かれたような腑抜けた1冊である。山村氏にはキレのいい怪奇ミステリがいくらでもあるのに、角川ホラー文庫唯一の作品が本書というのはちょっと…。

★☆(1.5)

 

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